新装・盛岡バスセンター(2022年)
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2016年に閉鎖された盛岡バスセンターが2022年10月に新装オープンしました。
再開発と聞いていたので、バスターミナル以外の何かができるのかと思っていたのですが、新築されたのは正真正銘の「盛岡バスセンター」でした。
それだけではありません。随所に旧盛岡バスセンターのオマージュとも思える要素が散りばめられていたのです。
なお、旧バスセンターの様子は、2016年盛岡バスセンターをご覧ください。
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(撮影は特記以外2022年12月22〜23日)
懐かしいロゴが再現されていた
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バスセンターの入口に掲げられているロゴは、旧バスセンターで使われていたロゴと同じものです。日本で初めてのターミナル法に基づくバスセンターとしてオープンした1960年から使われていた伝統あるロゴなのです。
そのロゴの上に、木のイラストが添えられたものが、新バスセンターのシンボルマークのようです。
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東棟2階のフードホールには、かつて壁面に取り付けられていたロゴの箱文字が、そのまま保存されています。
鉄道の駅などでは、旧駅舎をオマージュするというような工夫が見られることがありますが、バスターミナルでは珍しいことだと思います。それだけこのバスセンターが利用者や市民に愛されていたということなのでしょう。
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撮影:都南村民様(2022.10.12)
開業直後に展示されていたという、バス乗場表示や方面表示、管制台、そして入口看板です。
私が訪問した時は、既に展示は終了していましたが、どこかに保存はされているものと思います。
こういうアイテムを見ると、単なるターミナルではなく、文化施設のような位置づけを感じます。
飲食店も充実していた
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バスセンターのロゴがある2階のフードホールには、「場周辛麺」(ばすからめん)という店があったので、ロゴを眺めながら辛麺を食べることにしました。
木でできたテーブルにもロゴが彫られていました。このロゴマークをこんなにお洒落に蘇らせてくれたマジックには感激です。
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辛麺以外にもここには、ビアバー、ワインレストラン、焼き鳥とお酒の店などが並んでいます。
暮れゆく盛岡のバス通りを眺めながら、大人の夜を楽しむ雰囲気です。
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バスカウンターのある西棟の1階には、岩手県交通サービスが営業する「クイックキッチンK」というカレー屋さんがあります。
開店時間が昼時間と夕時間だけなので、夕食時間帯に行ってみました。人気商品はチキンカレーだとのことなので、それを購入。
特別メニューのキーマカレーもおいしそうでした。
さっき辛麺を食べてしまったので、カレーはテイクアウトして、ホテルで食べることにしました。
ちなみに今日のお宿は内丸にある「北ホテル」です。盛岡市内に“その頃”からあるホテルというのも少なくなりました。
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県交通カレーの隣りには「そば処南部」。旧バスセンターから引き継がれた店舗でしょうか。
ターミナルといえば“駅そば”。手早く食べてバスに乗る。そんな使い方はもちろん、ゆったりとした時間の流れを感じながらの南部そばも乙なものでしょう。
今回は、もうお腹がいっぱいなので、このお店は泣く泣くスルーしました。
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1階は東棟、西棟通じて「バスターミナル・マルシェ」と名付けられています。
東の端っこの狭い通路に面して「福田パン」も出店しています。
朝から開店していて、作り立てのほかほかを販売しているので、今日の朝食にします。お勧めのメニューという「ピーナツバター」を注文することにします。メニュー書きには「ピーナツ+バター」と書かれていたので、そう注文したら聞き返された上で「ピーナツバターですね」と言われてしまい、イチゲンさんがバレてしまいました。
新装された盛岡バスセンターの凄い所は、イートインのフリースペースがあらゆるところにあるということ。構内のお店で買ったものを食べる人、自販機で買った缶飲料を飲む人、或いはバスを待つ間に本を読む人、誰でもが気軽に利用できる素敵な空間です。
県産木材を生かした大きな窓の外を眺めると、そこでは色々なバスが走って行きます。
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そんなバスセンターを外から眺めてみます。冬の寒さが身に染みる12月、暖かそうなバスセンターで何かを食べたり打ち合わせをする人たちが見えます。
「ここで暖まって行こうか」そんな気持ちにさせる盛岡バスセンターです。
バスのりばだってある
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西棟の1階にチケットカウンターが並んでいます。岩手県交通(奥)と岩手県北バス(手前)、そして旅行部門のみちのりトラベル東北(左端)です。
カウンターの上のサイネージには、発車予定表が表示されます。
この場所は、矢巾や都南などに向かうバスが発車する「ななっく向かい」のりばにも近く、便利なロケーションです。
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バスのりばは旧BCと同じ位置にありますが、綺麗なホームが周回し、完全に屋根の下に納まっています。バスも時計回りの前進のみで、合理的な造りです。
ただ、発車本数は少なく、バスを待つ人もまばらです。
ななっく前などから一部でもこの場所に移動すれば、もっと便利になるのになあ・・・“その頃”の私だったら、そんなことを具体的に頭に描いてしまったでしょう。
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西棟の前が「ななっく向かい」のバスのりばなので、バスセンターと一体のイメージが強くなりました。
いすゞキュービックが2台続けてやってきたので、シャッターを押しました。
3階にはホテルやアートの空間
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今回私が立ち入らなかったのが3階。
バスセンターのフォルムを模ったロゴが斬新なホテルマザリウム。
スパやサウナなどを備えた新感覚の宿泊施設だそうです。ちょっとお洒落すぎて私が泊まるには向かないと判断し、今夜の私の宿にはなりませんでした。
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3階へはエレベーターで行くようです。
5:30から朝風呂に入れるとか、カフェバーで新メニュー登場とか、魅力的な宣伝文句が躍っています。
JAZZミュージアムもあるそうで、「ライブ限定ドリンクメニュー」の文字も見えます。
ちょっと数年見なかった古い友人が、ひっくり返るようなハイセンスで多趣味な人間になって目の前に現れた感じです。
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撮影:都南村民様(2022.10.12)
屋上から見下ろしたバス通り。
日野HRの「でんでんむし」がすれ違います。
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夕暮近づく盛岡バスセンターの前を右折するいすゞキュービックバス。
先代の盛岡バスセンターがあったから、この新しい盛岡バスセンターがある。定番のこの角度で通り過ぎるバスを眺めていると、そのことがよく理解できます。
新装されたその年のうちに来られてよかった。そう思いました。