30 Minutes NetWorking
No.SW08

30Minutes NetWorking

BCMSN

第8回VLAN(5) VTPプルーニング

■ VTPバージョン

スーパーインター博士

さて、スイッチ間で動的にVLAN情報を管理するためのプロトコルがVTPだったな。

ハイパーネット助手

VLAN情報用のルーティングプロトコルですよね。

スーパーインター博士

うむ。正確にはルーティングプロトコルと違うが、まぁ、そんなものだろう。
このVTPだが2つのバージョンが存在する。バージョン1バージョン2だ。

ハイパーネット助手

へぇ。新しいバージョンがあるんですね。

スーパーインター博士

そういうことだ。それで………。
すまん。忘れとった。バージョン3もある。

ハイパーネット助手

ははぁ。3つですか。で、どう違うんです?

スーパーインター博士

それは説明するが、まず先に言っておくと、今回バージョン3の説明はしない。
バージョン1・2とバージョン3では大きく違うのでな。

ハイパーネット助手

そうなんですか? ついでに説明しちゃってくださいよ。

スーパーインター博士

いや、話すと長いし、BCMSNの範囲外だしな。すまんが省略だ。
バージョン1と2の説明をする。 ▼ link

ハイパーネット助手

はいな。

スーパーインター博士

デフォルトはバージョン1で、以下の項目がバージョン2で新たにサポートされた内容だ。

  • 認識不可能なType-Length-Value(TLV)のサポート
  • バージョン依存型トランスペアレントモード
  • 一貫性検査
  • トークンリング環境のサポート
ハイパーネット助手

う〜ん。いまいちどうもさっぱりです。

スーパーインター博士

まぁ、ネット君がさっぱりなのはいつもの事だが、今回の件に関しては説明しよう。
まず、「認識不可能なTLVのサポート」。これはスイッチが理解できないTLVもそのままアドバタイズするということだ。

ハイパーネット助手

へ〜。で、TLVってなんです?

スーパーインター博士

あぁ。ヘッダ内の特定のどの値、という名前ではなくて。タイプ、データの長さ(Length)、値(Value)という形式で書かれているものをTLVというのだよ。要はサブセットアドバタイズメント内のVLAN情報のことだ。

ハイパーネット助手

ならそう書けばいいのに。

スーパーインター博士

まぁまぁ。次が「バージョン依存型トランスペアレントモード 」。VTPv1ではトランスペアレントスイッチは、VTPバージョンとドメイン名をチェックしてアドバタイズするが、VTPv2ではしない、ということだな。

ハイパーネット助手

ふむふむ。

スーパーインター博士

「一貫性検査 」は、VTP以外、つまりコマンドでの直接入力や、SNMPでの設定変更の場合、その変更内容があっているかどうかチェックするということだ。

ハイパーネット助手

VTPv1ではしないんですか?

スーパーインター博士

しない。
最後の「トークンリング環境」だが、これはそのままトークンリングでVTPを使いたい場合、VTPv2でなければならない、というということだ。

ハイパーネット助手

ははぁ。

スーパーインター博士

特にVTPv2を使う理由としては、最後の「トークンリング環境」のサポートが大きいらしいぞ。
さらに、VTPv2では、VTPv2を使うと設定したこともアドバタイズされる

ハイパーネット助手

ということは、それを受け取ったスイッチは、自分もVTPv2に変更するってことなんですか?

スーパーインター博士

そういうことだな。

ハイパーネット助手

なるほど。

■ VTP設定の手順

スーパーインター博士

さてさて。ではVTPを設定する際の手順を説明しよう。

ハイパーネット助手

手順?

スーパーインター博士

うむ。まず、VTPドメインには最低1つ以上のサーバが必要だ。
できれば2台だな。

ハイパーネット助手

最低1台必要なのはわかりますが、なぜ2台?

スーパーインター博士

もちろん、バックアップのためだ。クライアントモードのスイッチでは設定を記憶しないからな。
1台のみの場合、そのスイッチがダウンした場合、再設定が大変だからな。

ハイパーネット助手

ばっくあっぷ。なるほどです。

スーパーインター博士

サーバと名のつくものはすべからくバックアップサーバが必要なのだよ。
ともかく、1台できれば2台以上のサーバと、残りはクライアント、というVTPドメインがオススメだな。

ハイパーネット助手

少数のサーバと、多くを占めるクライアントですね。
PCのネットワークと変わらないですね。

スーパーインター博士

まぁ、そうとも考えられるな。
あとは、VTPバージョンも考えておく必要がある。VTPv2にするかしないか、だな。

ハイパーネット助手

さっきでてきましたよね。

スーパーインター博士

うむ、さきほどのVTPv2でのサポートされるものを必要とするかしないかできまる。
さて、まず1台のサーバを作り上げるわけだが、その後のスイッチの追加には注意事項がある

ハイパーネット助手

注意事項?
クライアントモードに設定して、サーバからアドバタイズを受け取ればそれで万事OKってわけじゃないんですか?

スーパーインター博士

いや、確かにアドバタイズを受け取ればOKなのだが。
まず、事前に今まで持っていたVLAN情報をすべて消去しなければならない。

ハイパーネット助手

??

スーパーインター博士

そのスイッチがいままでサーバモードだったりしたらどうする? そのスイッチはすでにVLAN情報を持っていることになるだろう?
そしてそのリビジョン番号がとても大きなものだったりしたら?

[FigureSW08-01:VLAN情報の混乱]

ハイパーネット助手

ありゃりゃ。こりゃよろしくないですね。

スーパーインター博士

だろう?
なので、新規に追加するスイッチは、事前にVLAN情報を削除し、リビジョン番号を0に戻しておく必要があるのだよ。
その手順は以下の通り。

  1. LANに繋いでいない状態で立ち上げる
  2. clear config all コマンドでVLAN情報を削除する
  3. 電源を落とし、リビジョン番号を0に戻す
  4. クライアントモードに設定し、LANに接続する
ハイパーネット助手

clear config allコマンドだけじゃ、リビジョン番号は0にならないんですか?

スーパーインター博士

ならない。必ず一度電源を切らないとリビジョン番号は0にならないので要チェックだ。

ハイパーネット助手

ははぁ。

スーパーインター博士

さらに、サーバモードで使うとしても、一度クライアントモードで接続する方がいいだろう。
クライアントモードで、既存のサーバから情報を入手した上で、サーバモードに変換するのだ。

ハイパーネット助手

なるほど。

■ VTPプルーニング

スーパーインター博士

さて、ネット君。VTP、VTPと説明してきたが、具体的にVTPが果たす役割について1つ説明しよう。
VTPプルーニングだ。

ハイパーネット助手

ぷるーにんぐ?

スーパーインター博士

そうだ。
ネット君。複数スイッチ間でのVLAN内のブロードキャストはどう動く?

ハイパーネット助手

どうって?
ブロードキャストだから同じVLANに伝播されますよね。

スーパーインター博士

そうだな。つまり、こういうことだな。

[FigureSW08-02:VLANブロードキャスト]

ハイパーネット助手

まぁ、こうなりますよね。

スーパーインター博士

SW-EとSW-FにはVLAN10はないんだぞ? 無駄じゃないか?

ハイパーネット助手

またでましたね、博士の「無駄」が。
確かに無駄ですけど。

スーパーインター博士

では、何が問題だ? どうやったらSW-EとSW-Fに不必要なフレームが届かなくなる?

ハイパーネット助手

どうやったらって。
そうですね、SW-BとSW-CがVLAN10に関係ないSW-EとSW-Fにブロードキャストを届けなければいいですよね。

スーパーインター博士

そうだ。その通り。
では、そのために何が必要だ?

ハイパーネット助手

何が必要って……。なんだろ?

スーパーインター博士

つまり、SW-BとSW-Cが、「SW-EとSW-Fにはこのブロードキャストの宛先(VLAN10)がない」と知ってればいいわけだよな。

ハイパーネット助手

そう…ですね。他のスイッチが接しているVLANの情報を持っていれば……。
だから、VTPってことですか?

スーパーインター博士

うむ。VTPで、VLAN情報を共有することによって、他のスイッチが接しているVLAN情報が入手できるわけだ。
これを使って、宛先が存在しないスイッチにはブロードキャストを送らないことを行う。これがVTPプルーニングだ。

[FigureSW08-03:VTPプルーニング]

スーパーインター博士

宛先の存在しない「枝を払う[prune]」、ということだな。
だから、VTPプルーニング。

ハイパーネット助手

なるほど。

スーパーインター博士

もちろん、特定のVLANをプルーニングの対象からはずす、という設定も可能だ。
例えば、VTPアドバタイズメントが流れるVLAN1、もしくはVLAN1から変更した管理VLANはプルーニング非対象だ。

ハイパーネット助手

管理VLANのフレームが届かないと困りますよね。

スーパーインター博士

そういうことだな。さて、今回はこれぐらいにしておこう。

ハイパーネット助手

はいはい。

スーパーインター博士

次回からはまた別の話だ。

ハイパーネット助手

いぇっさ〜。
30分間ネットワーキングでした〜♪

省略
CatOS8.1(1)以降でのみ使用可能です。
概略は参照リンクのCat4500・2948G/2980Gのコンフィギュレーションガイドを見てください。
VTPプルーニング
[VTP Pruning]
pruneは「(枝などを)切り落とす」「(費用を)切り詰める」などの意味。
プルーニングの対象からはずす
[pruning-ineligible]
ハイパーネット助手ハイパーネット君の今日のポイント
  • VTPにはバージョンが1〜3まである。
  • VTPバージョン2は1で非対応な事までサポートしている。
  • VTPをスイッチに設定する場合は、かならずVLAN情報を消してから行う。
  • リビジョン番号を0に戻すため、電源を一度切ることが必要。
  • ブロードキャストの宛先VLANが存在しないスイッチへフレームを送らないようにするのがVTPプルーニング。

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管理人:aji-ssz(at)selene.is.dream.jp