要約筆記奉仕員の養成カリキュラム等について
(平成11年4月1日 障企第29号)
(各都道府県・各指定都市障害保健福祉)
(主管部(局)長宛 厚生省大臣官房)
(障害保健福祉部企画課長通知 )
要約筆記奉仕員養成事業において使用する養成カリキュラム等については、「障害者の明るいくらし促進事業実施要綱」(平成11年4月1日障第238号厚生省大臣官房障害保健福祉部長通知)及び「市町村障害者社会参加促進事業実施要綱」(平成11年4月1日障第239号厚生省大臣官房障害保健福祉部長通知)において、別途通知することとされているが、今般、別添のとおり「要約筆記奉仕員養成カリキュラム」を定めたので、市町村及び関係団体への周知について特段の配慮をお願いする。
(別 添)
要約筆記奉仕員養成カリキュラム
対象者 | 要約筆記の学習経験がない者等 | ||||
養 成 目 標 | 聴覚障害、聴覚障害者、とりわけ中途失聴・難聴者の生活及び関連する福祉制度等についての理解と認識を深めるとともに、要約筆記を行うに必要な知識及び技術を習得する。 | ||||
カリキュラム構成 | 基礎課程 | 32時間 | 到達目標 | 聴覚障害,とりわけ中途失聴・難聴の特性を理解し,配慮して,他の要約筆記奉仕員とのチームワークにより,話し手の話を,早く,正しく,分かりやすく手書き又はパソコンを活用して文字化することにより伝えることが可能なレベル | |
養成目標 | @ 聴覚障害についての理解及び中途失聴・難聴者の特性についての理解を深めるとともに,コミュニケーション支援の考え方とOHP,パソコン等を使った要約筆記及びノートテイクなどの方法を習得する。 | ||||
A 基礎的な聞き取る力,要点を的確に把握する力及び話し手の話を分かりやすく表現する力を習得する。 | |||||
カリキュラム | 〔別表1〕 | ||||
応用課程 | 20時間 | 到達目標 | 聴覚障害,とりわけ中途失聴・難聴者の抱えている社会的課題をよく理解し,様々な場面に応じて,手書きあるいはパソコンを活用した要約筆記によりコミュニケーション支援を行うことが可能なレベル | ||
養成目標 | @ 要約筆記についての理解と認識を深めるとともに,聞き取る力,要点を的確に把握する力及び話し手の話を分かりやすく表現する力の向上を図る。 | ||||
A 聴覚障害者,特に中途失聴・難聴者の社会的需要を把握し,様々な場面に応じて,手書き又はパソコンを活用して要約筆記活動ができる技術と方法を習得する。 | |||||
カリキュラム | 〔別表2〕 | ||||
合計 | 52時間 |
別表1 基礎課程
教科名 | 時間数 | 目 的(学習の目標) | 内 容 | 講義担当職種例 | |||
共通科目 | 聴覚障害の基礎知識 | 2 | 耳の仕組みや聴覚障害の原因及び聴覚障害の多様性を理解するとともに,文字伝達の必要性を理解する。 | 1 | 聴覚生理(耳の仕組み) | 耳鼻科医師又は補聴器専門家 難聴学級教師 ろう学校教師 聴覚障害者(中途失聴・難聴者を含む) |
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2 | 聴覚障害の多様性 | ||||||
3 | 文字伝達の必要性 | ||||||
聴覚障害者とコミュニケーション | 4 | 聴覚障害者(特に中途失聴・難聴者)の生活実態を理解するとともに,様々なコミュニケーション支援及び要約筆記の必要性を理解する。 | 1 | 家族,地域(町内会等),職場などでの状況 | 聴覚障害者(中途失聴・難聴者を含む) 講師講習会終了者 |
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2 | 聴覚障害者の生活実態の中での体験談等 | ||||||
3 | 補聴器,人工内耳,磁気誘導ループ,補聴援助システム,字幕,文字表示機器などによるコミュニケーション支援 | ||||||
4 | コミュニケーションの多様性とそれに応じた支援の方法 | ||||||
5 | 要約筆記の必要性 | ||||||
聴覚障害者の活動と要約筆記の歴史 | 1 | 聴覚障害者の社会的ニーズ,団体活動の意味及び要約筆記の歴史を理解する。 | 1 | 聴覚障害者の社会的ニーズ | 聴覚障害者(中途失聴・難聴者を含む) | ||
2 | 聴覚障害者の組織と活動 | ||||||
3 | 要約筆記の歴史 | ||||||
聴覚障害者の福祉 | 2 | 障害の概念,ノーマライゼーションの理念等障害者福祉の概要を理解する | 1 | 障害の3つの概念 | 福祉関係職員 大学教員等 |
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2 | 障害者の定義 | ||||||
3 | ノーマライゼーション,リハビリテーションの理念 | ||||||
4 | 身体障害者福祉法における障害認定(聴覚障害者を中心として) | ||||||
5 | 障害者福祉施策の概要(聴覚障害者を中心として) | ||||||
要約筆記の基礎知識 | 3 | 要約筆記の三原則及び要約筆記技術の特性を理解するとともに,要約筆記を行う上での倫理と責務を理解する。 | 1 | 要約筆記の三原則 | 講師講習会終了者 聴覚障害者(中途失聴・難聴者を含む) |
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2 | 聞き取り方 | ||||||
3 | 書き方の工夫 | ||||||
4 | ノートテイクとOHP(オーバーヘッド・プロジェクター)等 | ||||||
5 | ボランティア活動とモラル | ||||||
日本語の特徴 | 2 | 日本語の言語としての基本的な特徴及び聞きながら要約する技術の基本を理解する。 | 1 | 日本語の言語としての基本的な特徴 | 講師講習会終了者 日本語教師 大学教員等 |
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2 | 文章を要約する基本 | ||||||
3 | 話し言葉と書き言葉(語彙等) | ||||||
4 | 話し言葉を要約する基本 | ||||||
筆記実習 | 4 | コミュニケーションを支援する方法を体験的に習得する。 | 1 | 聞こえない状況を学 | 講師講習会終了者 聴覚障害者(中途失聴・難聴者を含む) |
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2 | 筆談による会話 | ||||||
3 | OHP等を使って書いてみる | ||||||
4 | コミュニケーション支援環境のセッティング(OHP,磁気誘導ループ) | ||||||
5 | ノートテイク | ||||||
6 | パソコンに触れる | ||||||
7 | 様々なコミュニケーション支援方法の活用 | ||||||
計 | 18 | ||||||
選択科目 | 手書き実技 | 教科名 | 時間数 | 目的(学習の目標) | 内容 | 担当講師例 | |
要約筆記の標記 | 2 | 要約筆記における標記上の基本知識を習得する。 | 1 | 文字の大きさと行数・1行の文字数等 | 講師講習会終了者 聴覚障害者(中途失聴・難聴者を含む) |
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2 | 略号,略語等 | ||||||
3 | 聴覚障害関連用語等 | ||||||
読みやすい筆記 | 2 | 読み手を意識した要約筆記を習得する。 | 1 | 文の完結 | 講師講習会終了者 聴覚障害者(中途失聴・難聴者を含む) |
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2 | 語彙(漢字,送りがな等) | ||||||
3 | 読みやすい表現方法 | ||||||
4 | 話し手が複数の場合 | ||||||
話し言葉の要約 | 2 | 話し言葉のポイントを確実に伝えることを習得する。 | 1 | 正しく聞く | 講師講習会終了者 聴覚障害者(中途失聴・難聴者を含む) |
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2 | ポイントをつかむ | ||||||
3 | 要約して書く | ||||||
チームワークによる方法 | 2 | チームワークによるコミュニケーション支援の方法を習得する。 | 1 | 交代方法 | 講師講習会終了者 聴覚障害者(中途失聴・難聴者を含む) |
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2 | ロールの送り | ||||||
3 | 補助の役割 | ||||||
4 | 聴覚障害者の役割 | ||||||
5 | 他の通訳者の役割 | ||||||
現場実習 | 6 | 要約筆記が必要な現場で,文字による情報を聴覚障害者に確実に伝える能力を習得する。 | 1 | 聴覚障害者団体の例会等の活用 | 講師講習会終了者 聴覚障害者(中途失聴・難聴者を含む) |
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2 | 事前準備(前ロールの作成を含む)から後片付けまで | ||||||
3 | 要約筆記活動の事後検証 | ||||||
計 | 14 | ||||||
パソコン実技 | パソコンの取扱とシステムの知識 | 2 | 支援活動に必要な機材,操作,機械の知識及び文字投影までを習得する。 | 1 | パソコンの基礎知識 | 講師講習会終了者 聴覚障害者(中途失聴・難聴者を含む) ワープロオペレーター |
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2 | 設定環境とシステムの接続,投影 | ||||||
3 | 見やすい画面づくり | ||||||
タッチタイピング | 2 | タッチタイピング(手元を見ない入力)を理解する。 | 1 | タッチタイピング教材 | 講師講習会終了者 聴覚障害者(中途失聴・難聴者を含む) ワープロオペレーター |
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2 | ワープロソフト等の操作と習熟 | ||||||
3 | 話し言葉の速度と入力文字数の確認 | ||||||
要約と入力のチームプレー | 2 | 要約筆記の支援技術をパソコン入力に活用し,チームによるコミュニケーション支援の方法を習得する。 | 1 | 要約筆記者との連携 | 講師講習会終了者 聴覚障害者(中途失聴・難聴者を含む) ワープロオペレーター |
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2 | 録音テープ,講演ビデオ等の活用 | ||||||
3 | 講義・会議等でのプロジェクター投影 | ||||||
4 | 利用者による評価 | ||||||
一人での要約入力方法 | 2 | 一人で話し言葉を聞きながら要約し,入力する技術を取得する。 | 1 | 録音テープ,講演ビデオ等の活用 | 講師講習会終了者 聴覚障害者(中途失聴・難聴者を含む) |
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2 | 講義・会議等でのプロジェクター投影 | ||||||
3 | 利用者による評価 | ||||||
現場実習 | 6 | 要約筆記が必要な現場で,文字による情報を聴覚障害者に確実に伝える能力を習得する。 | 1 | 聴覚障害者団体の例会等の活用 | 講師講習会終了者 聴覚障害者(中途失聴・難聴者を含む) |
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2 | セッティングから後片付けまで | ||||||
3 | 要約筆記活動の客観的な評価 | ||||||
計 | 14 | ||||||
基礎課程合計 | 32 |
別表2 応用課程
教科名 | 時間数 | 目的(学習の目標) | 内容 | 講義担当職種例 | ||||
共通科目 | 中途失聴・難聴者の自立と社会参加 | 2 | 中途失聴・難聴者が自立し社会参加するために,要約筆記奉仕員が果たす役割を理解する。 | 1 | 障害の受容 | 講師講習会終了者 聴覚障害者(中途失聴・難聴者を含む) |
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2 | 社会復帰のための支援 | |||||||
3 | 心の支えとしてのコミュニケーション支援 | |||||||
4 | 中途失聴・難聴者の体験談 | |||||||
要約筆記奉仕員の役割 | 2 | コミュニケーション支援における要約筆記奉仕員の役割及び守秘義務を負うことを理解する。 | 1 | 守秘義務が発生する場面 | 講師講習会終了者 聴覚障害者(中途失聴・難聴者を含む) |
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2 | 聴覚障害者との信頼関係 | |||||||
計 | 4 | |||||||
選択科目 | 書き技術 | 教科名 | 時間数 | 目的(学習の目標) | 内容 | 講義担当職種例 | ||
現場でのポイントと心構え | 2 | 基礎的な技術を確認するとともに,現場実習で生じた課題を整理し,現場での活動のポイントと心構えを理解する。 | 1 | 基礎的な技術の確認 | 講師講習会終了者 聴覚障害者(中途失聴・難聴者を含む) |
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2 | 現場実習における課題の整理 | |||||||
3 | 受講生からの課題提起 | |||||||
4 | 中途失聴・難聴者が要約筆記に望むこと | |||||||
要約技術の向上 | 2 | 1 | 話し言葉を的確に要約し,意図を確実に伝えることができるように,要約の方法とそのポイントを習得する。 | 1 | 骨格法と凝縮法 | 講師講習会終了者 聴覚障害者(中途失聴・難聴者を含む) |
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2 | 上手な要約の方法 | |||||||
2 | 1分間に60〜80字の速度で筆記できるとともに,話に遅れないための要約の方法を習得する。 | 3 | 文章を要約する | |||||
4 | 話を聞きながら要約する | |||||||
話の雰囲気を伝える要約筆記 | 6 | 話における特定の部分や要素を選択して書くことによって,読み手に伝わる印象が大きく異なる事を理解するとともに,話の雰囲気を伝える要約筆記を習得する。 | 1 | 話し言葉のニュアンスを伝える要約筆記の方法 | 講師講習会終了者 聴覚障害者(中途失聴・難聴者を含む) |
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2 | 読み手を意識した書き方 | |||||||
3 | 練習文,模擬ビデオ等の活用 | |||||||
4 | 読み手の評価 | |||||||
二人書きの方法 | 6 | 一人で要約し書く方法を十分に身につけた上で,さらに多くの情報を伝える方法として,二人で協力しながら筆記する方法を習得する。 | 1 | 二人書きとは何か | 講師講習会終了者 聴覚障害者(中途失聴・難聴者を含む) |
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2 | 主筆者(メイン)と補助者(サブ)の役割分担 | |||||||
3 | 二人書きの利点と注意点 | |||||||
4 | 二人で書くことに慣れる | |||||||
5 | 見やすい二人書きの練習 | |||||||
現場実習 | 4 | 1 | 要約筆記が必要な現場で,文字による情報を聴覚障害者に確実に伝える能力を向上させる。 | 1 | 聴覚障害者団体の例会等の活用 | 講師講習会終了者 聴覚障害者(中途失聴・難聴者を含む) |
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2 | セッティングから後片付けまで | |||||||
2 | 正確,かつ速く,読みやすい要約筆記が身についたかどうか,読み手の評価を受けることによって,さらに専門技術を高める。 | 3 | 自己評価 | |||||
4 | 他者評価 | |||||||
計 | 16 | |||||||
パソコン実技 | 入力向上と正確なタイピング | 2 | 素早い入力により,伝達可能な情報量を増やすとともに,訂正の少ない効率的なタイピングを習得する。 | 1 | 入力速度の向上 | 講師講習会終了者 聴覚障害者(中途失聴・難聴者を含む) ワープロオペレーター |
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2 | 単語登録の工夫 | |||||||
3 | ハード,ソフトの操作の習熟 | |||||||
4 | 同音異義語の入力変換練習 | |||||||
正確な聞取り要約 | 2 | 様々な話し手の言葉を正しく聞き取るとともに,話し言葉のポイントを確実に入力することを習得する。 | 1 | 講演等のビデオ教材の活用 | 講師講習会終了者 聴覚障害者(中途失聴・難聴者を含む) ワープロオペレーター |
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2 | 読み取り津約との連携 | |||||||
二人で入力する方法 | 2 | 二人で効果的に入力する方法を習得する。 | 1 | LAN等を活用したシステム | 講師講習会終了者 聴覚障害者(中途失聴・難聴者を含む) |
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2 | 二人で入力するソフト等 | |||||||
3 | 連携方法 | |||||||
多様なニーズへの対応 | 6 | 聴覚障害者の社会参加に即して,場面に応じたシステムと入力方法を習得する。 | 1 | 講義,講演等の場面 | 講師講習会終了者 聴覚障害者(中途失聴・難聴者を含む) |
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2 | 会議,パーティー等の場面 | |||||||
3 | その他大会等の場面 | |||||||
現場実習 | 4 | 1 | 要約筆記が必要な現場で,文字による情報を聴覚障害者に確実に伝える能力を向上させる。 | 1 | 聴覚障害者団体の例会等の活用 | 講師講習会終了者 聴覚障害者(中途失聴・難聴者を含む) |
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2 | セッティングから後片付けまで | |||||||
2 | 正確,かつ速く,読みやすい要約筆記が身についたかどうか,読み手の評価を受けることによって,さらに専門技術を高める。 | 3 | 自己評価 | |||||
4 | 他者評価 | |||||||
計 | 16 | |||||||
応用課程合計 | 20 |
(注) 聴覚障害者が講義を担当する際には、適宜、手話通訳,要約筆記等のコミュニケーション支援が必要である。