やれ打つな!にも程がある

今夜、何年ぶりでしょうか。ハエが我が家に紛れ込んできました。

   やれ打つな ハエが手を擦る 足を擦る

とは、一茶が詠んだ詩ですね。殺されそうになっているハエが手足を擦っているのを見て命乞いをしているように見えたということだったと思います。

夏に蚊が紛れ込んだときなど、素早く手で捕まえたとしても柔らかく握るまでで止めておき、最悪でもピクピクした瀕死の状態のまま外に逃がしてあげるという、基本的に殺生を禁止している薬缶なので、しばらく部屋内を泳がせておきました。しかしなにせ数年ぶりの小さなお客様。どーにも気になり始めまして軽く気絶してもらおうかとなりました。壁に止まったことを確認した後、近くにあった冊子にチラッと目をやり、すぐさまそれを右手に取り、さっき止まっていることを確認した壁を見ると、

  い、いない!?

と思った瞬間、右手の甲にささやかな感触が・・・。そうです、ハエが右手に・・・。

  ナ、ナメラレテル・・・。カチーン。

こんな屈辱は初めてです。特例事項が起きました。
「気絶はやめだ。。。死んでもらおう。。。」
しかし、その後しばらく追ってもなかなか僕の攻撃に屈することなくハエは部屋中を飛び回ります。見失ったり見つけたりの繰り返しのままラチがあきません。仕方がない、秘密兵器の登場です。じゃじゃーん、ハエたたき。ジツは薬缶ら夫婦、結婚したときのお祝いのひとつに、ハエたたきなるものを戴いていたのです。布団たたきには小さすぎるのでハエたたきで間違いないと思います。ブサイクなかわいらしい顔がデザインされています。僕はこれを"ハエたた君"と名付け、目的を共有し、二人協力することで使命を果たすことを誓いました。

さすがハエたた君。冊子を丸めたものとは"しなり"が違います。目標に向かう"スピード"が違います。"使命感"が違います。あっと言う間でした。薬缶に衝撃の屈辱を食らわせてしまったそのハエは、発見当初からすれば不本意ながらもご臨終と相成りました。

ひとつの命を終わらせてしまった罪悪感を少なくとも感じているところへ、嫁さんが最後の仕上げを。そう、ティッシュでひとつまみしてゴミ箱へポイ。

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