「東宝特撮映画感想文」スペシャル
「ゴジラ−1.0」感想文


(はじめに)
 ということで「ゴジラ70周年記念作品」として公開され、今年日本アカデミー賞層優秀
作品賞をはじめとした8部門を受賞、そしてアジア映画としては史上初となる第96回米ア
カデミー賞視覚効果賞を受賞という偉業を成し遂げた「ゴジラ−1.0」のBDを拝見しまし
たのでそれの感想文を発表したいと思います。
 2014年に米レジェンダリー・ピクチャーズ版の制作以来、日米での劇場版作品をはじめ
として劇場版アニメ3部作、TVアニメ(『ゴジラS.P』)現在放送中のミニアニメ「ちびゴ
ジラの逆襲」と令和の世に完全復活をした、と思われるゴジラですが、果たしてこの勢い
は今後も続くのでしょうか?
 それでは感想に参りましょう。なお、本文中作品のネタバレを含んでいるので注意して
くださいませ。

戦後、日本。無(ゼロ)から負(マイナス)へ。
「ゴジラ−1.0」

(スタッフ)監督・脚本・VFX/山崎 貴、音楽/佐藤直紀

管理人が個人的に思うのですが、山崎貴監督というのはご自身が監督した作品の評価の振
れ幅がものすごく極端な監督だと思うんですよね。
例を挙げれば「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズや戦艦大和の建造から沈没までを描いた
「アルキメデスの大戦」は高評価でしたが、その一方で「ドラゴンクエスト ユア・スト
ーリー」や「STAND BY MEドラえもん」2作(これは共同監督だが)はあまり評価が高くあ
りませんでしたから、正直言って山崎貴監督が次のゴジラの監督をやる、と聞いて不安な
部分があったのは事実ですし。
で、まあ今回「ゴジラ−1.0」を見て思ったのは「これほどゴジラ愛に満ちていた作品はな
いんじゃね?」ということでして。

なんでも山崎監督が影響を受けた、というゴジラ映画は「ゴジラ モスラ キングギドラ 
大怪獣総攻撃」(2001年)とのことですが確かに見てみると「GMK」を思い出させるよう
な演出があったのも事実ですからね。例えばクライマックスの「海神(ワダツミ)作戦」
でのゴジラの最後は「GMK」のそれを思い浮かべますし(最後のオチも「GMK」での
海底深くに沈んでいるゴジラの心臓が動き始めて、と言うのと同じようなものだし)。
それに「GMK」ばかりではなく、1954年の第1作や所謂「平成ゴジラ」をオマージュし
たような演出とか、あるいは全員で力を合わせてゴジラに立ち向かう、というのは「シン・
ゴジラ」のそれと同じですからね。おそらく山崎監督は過去作をいろいろと研究したので
はないか、と思いますが。
特にゴジラが銀座を襲う場面ですが、管理人個人的にはあれは山崎監督が一番やりたかっ
たシークエンスだったのではないか、と思えるくらいで。
というのも第1作でもゴジラが銀座を襲撃しますが、あれでも日劇(今の有楽町マリオン
が立っている場所)を破壊する場面とか、電車を襲撃する場面がありましたしね。
それにゴジラが上陸した翌日の場面も第1作にありましたから、それをアップデートした
のが「ゴジラ-1.0」における銀座襲撃場面だったのではないか、と思いますね。
それに第1作はあまり人々が避難する描写はなかったのですが(まあ、夜ということもあ
っただろうが)、今回は真っ昼間に出現しますから、「確かに昼間銀座あたりに突然ゴジラ
が現れたらああなるだろうな」と思えましたしね。

それに、1945年に復員してから典子と明子と出会ってからの2年間の描写も「本当に終戦
直後だったらこんなこともあるだろうな」と思わせる演出でして。
実は今回の「ゴジラ-1.0」も前作の「シン・ゴジラ」のようにこれまで一度もゴジラが出
現したことのない世界、しかも年代設定が終戦直後で、GHQによって帝国陸海軍が解体
させられ、日本が公的戦力を持っていない、という昭和22年の設定ですからね(自衛隊の
前身である警察予備隊が組織されたのは昭和25年。その後保安隊を経て自衛隊となったのは
昭和29年=つまり第1作が公開された年)。
だからこの辺りは「ALWAYS 三丁目の夕日」を見ているんじゃないか、と思ったく
らいで(笑)。

そして最後の海神作戦もやはりクライマックスということでか、一体どうなるのかと思っ
て見入っちゃいましたし(個人的に、最後にゴジラの口に震電が突っ込んでからのシーク
エンスからの橘のあのセリフは同じ山崎監督の「SPACE BATTLESHIP ヤマト」のキムタク
が演じた古代進や劇場版アニメ第3作のハルオに聞かせてやりたいですね(笑×2)。
(まあ、「生きて、抗え」というテーマだからああなるのが自然なのだろうが)

勿論この映画でも気になった部分はあったわけでして。
上にも書いた通り、今回の作品は昭和22年という時代設定で、この頃日本はGHQによる
占領政策が続いていていたわけですが、ゴジラという未曽有の危機があるというのにGH
Qが全く動かない、というのもどうかと思いますがねえ。
一応設定上は「ソ連を刺激してはいけない」という理由でアメリカ軍やGHQは関係しな
い、ということになっていますが。でも東京上陸前に何隻もの軍艦がゴジラに破壊されて
いるんですぜ。その事実を知ってもアメリカ軍が何もしないとは思えないのですが。まあ、
アメリカ軍を出動させるとなると(今ほど問題とはならないだろうから)アメリが対
ゴジラ用に核兵器を使うか否か、という問題になってしまいますから、そう考えると1984
年の「ゴジラ」や「シン・ゴジラ」と同じようになってしまいますが。
それに海神作戦で水島がどうやってあれだけの船を集めることができるのか、という説明
も欲しかったですね。
それにあのラスト前の敷島と典子の再会したときの「アレ」は何なのでしょうか? 「マ
タンゴ」みたいなラストをイメージしたのでしょうかね?

まあ、それを抜きにしても面白かった作品であることは変わりがないし、「シン・ゴジラ」の
後、ということで「あれ以上に面白い作品を」ということでハードルがすごく高かったと
思いますが、山崎貴監督はそれを軽く超えてしまった上に、さらにハードルを高くした(そ
れこそ走高跳のバーの高さ並みに)してしまったのですからねえ。次回作の監督はさらに
プレッシャーがかかるのではないか、と思いますが(笑)。
とはいえ個人的には毎年、とまではいかなくても2〜3年に一度くらいの割合で日本で新作
が作られるようになってほしいな、と思いますね。

それと管理人が買ったBDに同梱されていたモノクロ版「ゴジラ-1.0/C」(「ゴジラマイ
ナスワン・マイナスカラー」と読む)について。
ちょっと見ただけですけれど、2023年の映画のはずなのにモノクロだった最初の2作(第
1作と1955年の「ゴジラの逆襲」)と同じ時期に作られた映画を見ている気がして、モノク
ロにしただけで随分と印象が変わったな、という気がしますね。

最後に管理人が今後見てみたい「ゴジラ」作品を(勿論ゴジラと怪獣のバトル物も見てみ
たいがそれはまた別の機会に)。
一つはたびたび名前が出ている「ALWAYS 三丁目の夕日」の頃を舞台にした高度経
済成長期真っ只中の日本をゴジラが襲い「せっかくここまで築き上げた日本が叩き壊され
てしまった」という作品。
もう一つが今回より時代設定が前、つまり1945年7月の「トリニティ実験」の影響でゴジ
ラが誕生してしまうが、この事実を発表するとアメリカが原爆を開発していることが世界
にわかってしまう。そうしているうちにゴジラが日本に出現して…、という作品(ちょう
ど「オッペンハイマー」という映画も公開されたしね)。

ということであの作品に出てきた明子ちゃんがまっとうな人間に育つことを祈って感想文
を終りにしたいと思います。



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