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異星人歓迎会

 人類が宇宙へ飛び出し五年ほど――。
 ここ数年、宇宙管理局総合部多種族問題対策課は、それまでとは打って変わった忙しさに見舞われていた。
 それというのも、急に地球外からの外来種に特定の症状が増えたからである。地球人には異変はなく、地球人と構造が異なる者ほど異変が顕著に現われるらしい。
「どうします、先輩。今度はピーマンを頭に乗せて阿波踊りだそうですよ」
「そうかあ……」
 後輩の、内容に不釣合いとも思える深刻な声に、波口はデスクに足を乗せたまま、やる気のない返事をする。
「いっそ、お祭気分が味わえる惑星として地球の観光ポイントにしちゃったら? 本人は幸せなんだろ?」
「駄目です! 皆さん、色々な目的で地球にいらっしゃってるんですよ? 真面目にやってください!」
 精一杯声を荒げる後輩をよそに、波口は、ああ、いつみてもこのコの色素の薄い耳にあのサファイアのイヤリングは合ってるなー、などと考えていた。
 後輩は山吹色のワン・ピースの胸ポケットから、小型の端末を取り出してモニターをのぞく。
「今月に入ってもう十件です。一番多いのは温泉で組み体操だとか」
 外来種族の異変は、何種類もの奇行だった。どれも直接命に関わるものではないが、地球に来て一日の間に発症し、地球を離れるまで続くという。
「最初の発症は四年前の九月。季節や月の共通点はありません。一度発症した者は、二度目は大丈夫なようです」
 彼女は独自にデータをまとめていたらしく、端末から部屋の巨大スクリーンへ、様々なグラフをまとめた映像を転送する。
「場所的には、水辺が多いようですが、決定的な偏りと言えるかどうか、という程度です」
「ふーん……」
 一応グラフに目を向けながら、波口は『海水浴場で水着でパイ投げ』という項目を見つけ、楽しそうだな、と思う。
「地球人が大丈夫ということは、肉体的に地球人にはない性質が関係しているとも思われます。現在、調査中です」
「じゃあいいじゃん」
 やる気のないことばに、ふたたび後輩が青筋を立てて怒鳴るが、波口は意に介さない。
「そんなことより、どこか遊びに行こう。パイ投げでもしよう」
「まったく、先輩はいつもそうなんですから」
 もう、仕事の時間も終わりだ。
 あきらめたように溜め息を吐いてから、発症してこの惑星を去る異星人たちと同じように、後輩は少し疲れたような、楽しそうな顔をして言った。


※モノカキさんに30のお題「シンドローム」回答

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