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闇の中
昼間の通り。若い刑事が若者たちに問いかける。
差し出されたのは写真。昨日、ただ指輪だけ身につけて、川へと飛んだ女の写真。
「知らない」
それだけが返される答。
女は詩の本を手に飛び降りた。しおりは投稿ページに挟んだまま。
くるくるくる 時がくる
忘れぬ思ひ 今は忘れ
詩に死にのがれぬ ×の夢
桜散るらむ 闇の中
本を開いて刑事は悩む。
その詩の投稿者の名、それは女のかつての恋人。
「投稿者に確認をとってくれ」
部下に声をかけ、何度も何度も詩に目を通す。
もう来たそら来た ふたつの流れ星
私をさらって 闇の中
短い、意味のわからぬ詩。最後の段落はこうだった。
契りを結んだ 闇の中
ともに行こう 闇の中
――翌日、女の同性の友人が自室で自殺。その恋人で女のかつての恋人でもある男は、つい先日事故死していた。
家族にも刑事にも、なぜ女たちが死んだかわからない。
ただ三人とも、それが義務のように、事切れる際は同じ指輪をはめていたという。
※モノカキさんに30のお題「罪」回答