第227回 日本を席巻、大人向け幼児教育

久しぶりに都心へでかけた際に電車を使ったが、あらためてカルチャーショック。

まずは車掌さんの
「私は車掌の〇〇です。交代の〇駅までご案内をさせていただきます」

さて、そのご案内なるものの内容は「ご案内」の表現が適切なのかどうか。
「ご案内」は息を継ぐ暇もないほどのべつまくなしに車内に騒音となって
タレ流されたが、その内容がひどいと感じたのはわたしだけなのでしょうか。

「この先、電車が揺れますので危険ですから、吊革におつかまり下さい」
「電車がホームに着きましたら入り口にお立ちの方は、
一旦車内からホームに降りて降りる方にお譲りください」
「電車内で読まれた雑誌や新聞はそのまま電車内に放置しないで、お持ち帰りください」
「電車の優先席では、体の不自由な方や高齢者に席をお譲りください」
「携帯電話の使用は電車内ではお控えください。
 またマナーモードに設定されますようお願いいたします」

これらはわたしが乗車した30分ほどの間にすべてタレ流されたもの。
他にもあったが記憶力が滑り落ちる速さで減退している身には、
上記だけでもよく覚えていたと自画自賛をするほど車掌さんは喋りまくっていた。

一見、とても親切と思わせる内容が功を奏して、
これまで改善されることがなかったのか。

しかし、内容をあらためて吟味すると、
幼稚園や学校で幼児や児童らに生活上の危険のあれこれや、
マナー教育を施すようなレベルのもの。
他の国でこのような幼児教育が大人に向けてされるとはとても思えない。
誇り高い国の人ならば即刻クレームがつくはず。

ホームでもそれは続く。

「三列乗車にご協力ください」
「滑り込み乗車は危険ですからおやめください」
「電車が来ると危ないですから、ホームの縁を歩かないでください」
「エスカーレーターでは右側をあけてください」

階段には上り下りを示す矢印や足あとのマークが書いてあり、
ますます幼児化は度を増してくる。
その足あとマークや矢印に、よく管理された大人たちが黙々と従う。
もちろん上り下りの混雑を避けるための方策であることは間違いないが、
このような形で表し従わせるのが正しいものなのかと考えてしまう。

「揺れるから吊革におつかまり下さい」は一見親切に思えるが、
JRが管内で発生する事故の責任を回避するための安易な方法として、
手っ取り早く幼児教育で乗客を管理しているのでは。

他の項目にしても、言葉は丁寧でも乗客に対する尊敬も信頼も皆無。
公衆道徳やマナーは大人として守らなければならないのはもちろんだが、
守らないからと幼児教育で管理するのは大人として納得がいかない。

それでも日本と言う国は世界でも特殊な社会事情をもつ国なのだろうか。
道路上の信号待ちのラインにも足あとや矢印マークがあり、
黒いアスファルトの路面は、オーバーに表現すれば白く塗り替えられたように
「この先カーブ」「止まれ」に始まり、白い文字で埋められている。
いろいろな国をドライブした経験から言うと、やはり疑問符が付く。

これまで述べた内容を「親切」と感じるのは、
自ら考えることを放棄して他人の判断や指示に任せているとしか思えない。
おとなしい羊のような国民性は、
社会の常識として徹底して管理されてきたせいなのか。

生まれたときから管理されることを意識できないまま、
当たり前のこととして受容してきた結果なのか。

世界が称賛する日本人のマナーの良さは、
ひょっとすると徹底した管理がもたらした結果だと捉えると、
心情的にはかなり複雑になります。


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