「ねぇ〜アニキィ〜(はぁと)」
「イヤ」
「ま、まだ何も言ってないでしょっ!!」
「だって、鈴凛が猫撫で声で擦り寄って来る時って、ろくなこと言って来ない
んだもん」
「し、失礼ねぇ〜っ! とってもお得な情報があるから教えてあげようとした
だけでしょ」
「ほぉ……ま、一応言ってみて」
「そう来なくっちゃ! 実はこの度、金融法の改正に合わせて新たに“リンリ
ンファンド”って言う金融商品を作ったんだけど……」
「ほぉ……」
「今アニキの今月のお小遣いを注ぎ込んで、この商品を購入して頂くと3ヶ月
後にはナントっ!!」
「なんと?」
「5分の1にっ!!」
「減るんかいっ!!」
「慌てるのは早いわっ!! 6ヶ月後にはナントっ!!」
「……なんと?」
「50分の1にっ!!」
「加速度的に減ってるっ!!」
「買ってよぉ〜リンリンファンドぉ〜。騙されたと思ってぇ〜」
「思っても何も、騙されるじゃないかっ!! そもそも、何でそんな回りくど
い言い方するの!? まだ素直に『お金貸して』とか言った方が可愛げがある
よ……」
「お金ちょ〜だい(はぁと)」
「イヤ」
「むっきぃぃぃぃぃっ!!! どっちみちくんないんじゃないっ!!!」
「うわっ! ぎゃ、逆切れるなっ!!(汗) 第一、今月まだお小遣い貰ったば
っかりなんじゃないの?」
「だぁ〜〜ってぇ〜〜っ!! 先月、メカ鈴凛を完成させる為にお小遣い前借
りしちゃったから、今月の運転資金0なのよぉぉぉ〜〜っ!!(泣)」
「だぁぁーーっもう!! 泣きながらすがり付くんじゃない!! 何でそう、
計画性が無いの!」
「迸る発明のパトスは止められない物なのよ……嗚呼、自分の無尽蔵の才能が
この時ばかりは疎ましい……(フッ)」
「あのね……大体僕だって毎月一杯一杯なんだから。そうそう毎回毎回鈴凛に
融資してられないよ。働いてる訳じゃ無いんだし」
「……アニキって見た目と違って、意外に頑丈だからガテン系のアルバイトで
もしてみない?」
「鬼かアンタ……」
「何よ失礼ね! ちょっと上前5分の4くらいピンハネしようと思っただけじ
ゃない!」
「本気で鬼かっ!? 第一、中学生でそんなバイト出来ないよ!!」
「何よ根性無し!!」
「いや、根性の問題じゃ……」
「……じゃあ、甲斐性無し?」
「違うっ!!」
「何よ何よっ!! アニキのケチぃぃぃぃぃっ!!!」
(ダッダッダーーーーーッ…………)
「僕がケチなのか……?」
「全くしょうがないマスターですネ」
「あ、メカ鈴凛。どう、調子は?」
「良好デス。各機関共正常に稼働中。特にアニキ様のお側に居ると、とっても
『元気』が湧いてきマス(はぁと)」
「そ、そう?(照れっ) あ、そうだ。悪いんだけど、これ鈴凛に渡しといてく
れる?」
「?」
「そうだな……雑誌の懸賞に当たった――とか言ってさ」
「…………アニキ様は、マスターに甘すぎマス」
「はは……メカ鈴凛は鈴凛に厳しいね」
「当然の意見を述べているだけデス。それに何故、先程ご自分でお渡しになら
なかったのデスか?」
「……ああ見えて、結構僕に気を使うからね、鈴凛は」
「ですが……」
「良いんだよ。妹にお小遣いあげるなんて、兄にとっては嬉しいと思いこそす
れ、イヤだなんて思う筈無いんだから」
「…………」
「それにまあ……貯金箱みたいなもんだよ。そのうち、ちゃ〜んと返して貰う
から♪」
「……どんな風にデスか?」
「(クスッ)どんな風にだと思う?」
「……どちらにせよ、マスターにとっては得なだけだと思いマスが」
「……そうだと、嬉しいんだけど……」
「(むぅ〜〜……)」
「ど、どうしたの?」
「ズルイです」
「へ?」
「私にも、貯金シテ下さい」
「え!? い、いやもうお金無い――」
「ア・ニ・キ・さ・ま!!」
「か、勘弁してくれぇ〜(泣)」
【10月17日は貯蓄の日なんだってさSP】
☆ Sister Princess ☆
2years ago
<Short×3>
−Saving's Day−
−That's all.−
(1st edition : 2000/10/17)
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