☆ Sister Princess ☆
<Short×3>

−meow−



「今日帰ってきて寝室に入ったら、ベッドにぐーたら猫が寝てました。僕とし

ては非常に驚いたわけで……痛、痛い、痛いって! 噛まないでよぉ」

「誰がぐーたらよ、誰が!」

「だって、ベッドの上で丸くなって寝てるんだもん」

「う゛(汗)。しょ、しょうがないじゃない。お天気よくてポカポカしてたし、

お兄様の匂いのするベッドで、1人ですることっていったら待ちくたびれて寝

ちゃうか、(ピー)するかぐらいしかないでしょ?」

「(ピー)は止めなさい、(ピー)は」

「見たいクセに(はぁと)」

「見たナイ、見たナイ」

「ぶー! 何か今日のお兄様、冷たい! それが、久しぶりに会いに来た恋人

に対する態度なの!?」

「恋人って……(汗)」

「あによぅ。文句ある?」

「……イエ」

「そうよねぇ。散々私の体弄んどいて、今更言い訳なんて出来ないわよねぇ(はぁと)」

「僕の体も散々弄ばれた痛、痛いって。何で直ぐ噛むかな? 姉妹揃って……」

「むぅ! 千影のことなんて、どうでもいいでしょ!」

「ダメだよ、妹とは仲良くしないと」

「恋敵と仲良くする趣味なんて、ありません〜!」

「あのね……あ、そうだ」

「ん? どうしたの?」

「いらっしゃい、会いたかったよ」

(ちゅっ)

「(赤〜〜っ!)ひ、卑怯よ不意打ちなんて……(はぁと)」

「マンネリ防止策ですよ、姫様」

「さっきの冷たい態度も?」

「イヤ、あれは素」

「…………」

「……笑顔で両手わきわきさせながら、にじり寄るのヤメて(汗)」

「お兄様が、いぢわるするからでしょ! ん?……はっはぁ〜ん……判ったわ!」

「な、何が?」

「さてはお兄様ったら、好きな娘にはいぢわるしちゃうってアレね! そうで

しょ(はぁと)」

「う(赤〜〜っ!)、な、何を――小学生じゃあるまいし……」

「んふふ〜〜(はぁと)」

「あう(汗)……お、お腹減ったなぁ〜……何か食べに行く?」

「あ、それじゃ私がお夕飯作って上げる!」

「え!?」

「む! なぁにその“え!?”っていうのは?」

「いや、珍しいなって……」

「そんなことないわよ。私最近、結構お料理の練習してるんだから。お兄様が

ちっとも帰ってこないから、知らないだけで」

「う゛……ごめん」

「そう思うなら、もう少しまめに帰ってきてね。お忙しいのは判るけど……お

願い」

「……うん」

「それじゃ、行きましょう――っと、その前に……」

(ごそごそ……)

「? どうしたの?」

「え〜〜っと――あったわ。ハイお兄様、これ私に着けてくださる?」

(ちりん♪)

「い!? こ、これって……(汗)」

「ねぇ、はやくぅ〜〜(はぁと)」










「んふふ……お兄様とショッピングなんて久しぶりよね♪」

「あ、あのぅ……」

「わぁ〜、見て見てお兄様! すっごく綺麗な夕焼け空! すてきねぇ……(はぁと)」

「ねえってば……」

「なあに? お兄様」

「……さっき着けたその首のやつ……チョーカーに見えなくもないけど……」

「可愛いでしょ?」

(ちりん♪)

「でも、鈴まで付いてたら、まんま――“首輪”じゃない!!」

「首輪だもん」

「うわ、あっさり」

「おかしいかしら? 似合わない?」

「いや、この場合似合いすぎてることが、問題なのであって……(汗) あそこ

のスーパー、うちのマンションに住んでる人は、皆結構利用してるんだけど……」

「ご近所ですもんね」

「つまり、そんな場所に首輪着けた女の子と一緒に、腕組んで行ったりなんか

したら、どんな噂が流れるか……そもそも僕らって周りからどういう風に見え

てると思う?」

「ご主人様と奴隷」

「うわ、あっさり」

「こんな可愛い娘が奴隷だなんて、嬉しいでしょ?」

「あのね……そんな噂がご近所中に流れたら――」

「もう、ご近所公認の仲よね(はぁと)」

「どんな仲よ(汗)」

「それに、そうなったらお兄様に悪い虫も付かなくなるしぃ(はぁと)」

「……それが狙いか……(汗)」

「てへ(はぁと)」

「てへじゃない、てへじゃ」

「なによぅ。付けたいの? 悪い虫」

「……まさか。もしそうなら、こんなことしないよ」

(ちゅっ)

「ん!?…………も、もぉ〜不意打ちは卑怯よ(赤〜〜っ!)。しかもこんな往

来で……(はぁと)」

「首輪着けた娘が言うかな? そういうこと」

「だってぇ〜」

「奴隷は、ご主人様の言うことに従うものだよ(にこっ)」

「あ……(ぽっ) ハ、ハイ、ご主人様(はぁと)」










「さあ召し上がれ、ご主人様(はぁと)」

「ごめん、お願いだから普通に戻って(泣)」

「えぇ〜!? どうしてぇ〜?」

「だって、話しづらいし。さっきだってスーパーで『ご主人様ぁ〜』って大声

で呼ぶんだもん(泣)。それに、こういう時って必ず誰かから電話とか掛かって

きて――」

(トゥルルルル……トゥルルルル……)

(ガチャッ)

「ハイもしもし、天河です」

「だぁぁぁぁぁっ!!(汗)」

「あら、どうしたの? え、私? 私は今、お兄様――もといご主人様にご奉

仕してるのよん(はぁと)。ご主人様ったら、凄いのよ。もう、あんなこととか、

こんなこととかヤりたい放題(ぽっ)。私、壊れちゃわないか心配だわぁ(はぁと)。

……え? だめよ。ご主人様の手を、煩わせるわけにはいかないわ。用件でし

たら、私が承ります。あらそう、それじゃ残念だけど切るわね。ご機嫌よう(はぁと)」

(チンッ)

(チョキン)

「さ、お兄様ご飯にしましょう。せっかくのお料理が冷めちゃうわ」

「ちょっとちょっと!! さらっと流さないでよ!!(汗) 今の誰!? しか

も、ナチュラルに電話線切断するし!! そのハサミ、どっから出したの!?」

「そんな一遍に聞かないでよ」

「じゃあ、今の誰!?」

「千影」

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!」

「そんな、叫ばなくても……」

「な、何て? 何て言ってたの?」

「え!? えっと……私が承りますって言ったら、確か“チョウセンアサガオ”

……とか何とか言って、切っちゃったけど」

「うそーーん!!(ガビーーン)」

「何なの? そのチョウセンアサガオって」

「有毒植物だよ! トリカブトやハシリドコロに匹敵する!」

「ハシリドコロ?」

「アトロピンとかヒオスチアミン、スコポラミンを含んでて――と、とにかく

どうしよう!?(汗)」

「そうね、取り敢えず――」

「取り敢えず?」

「ご飯にしましょ(はぁと)」

「どういうことよ?」

「だって、冷めちゃうぅ〜! せっかく一生懸命作ったのにぃ〜! それに、

大丈夫よ。何だかんだ言って、私と一緒だから、あの娘」

「?」

「お兄様には、甘いってこと(はぁと)」

「…………まあ、しょうがないか。電話掛け直そうにも、電話線切っちゃった

し……」

「ハイ、ご飯とおみそ汁」

「あ、ありがと。……肉じゃがに、ぶりの塩焼き。ほうれん草のおひたしと、

かぶの浅漬け。う〜〜ん、どれもご無沙汰なものばかりだよ」

「でしょ!」

「味は……うん! 美味しいよこの肉じゃが! よく味が染みてるし」

「でしょでしょ!」

「(もぐもぐもぐ……)」

「たぁ〜〜っくさん食べてね(はぁと)」










「お風呂湧いたわよ、お兄様」

「あ、先に入ってよ」

「えぇ〜〜! 一緒に入りましょう。お背中お流しいたしますわ、ご・しゅ・

じ・ん・さ・ま(はぁと)」

「え(赤〜〜っ!)、い、いいよそんな……って、押さないで……」

「いいからいいから。ハイ、お兄様も早く脱いで下さいねぇ〜(はぁと)」

「いや、だから悪いし……って、もう自分は脱いでるし」

(ちりん♪)

「ほら、男の子がグズグズしない」

「チョーカーだけ着けたままだし」

「早く入ってきてね♪」

「もう浴室に入ってるし」

「何ブツブツ言ってるの? お兄様」

「このまま、リビングに取って返すこともできるけど?」

「…………来てくれないと、浴槽で手首切ってるかも……」

「こらこらこら!(汗)」









(かっぽーん)

「で、結局一緒に入ってるし」

「なによぅ。こんな可愛いらしい乙女と、一緒にお風呂入れることのどこに不

満があるっていうの!(怒)」

(むんずっ)

「ほぅ!? お、乙女がそんなとこ掴まないでよ!(汗)」

「お兄様のバカぁ〜〜!」

(ぐぃんぐぃん!)

「スイングさせるなぁぁっ!!(汗)」

「なによぅ! 私のことなんて愛してないんでしょ!!……て、あら? 何だ

か凄く元気に……(ぽっ)」

「………………(ぷち)……判った。じゃあ、もう我慢しない」

「へ?」

「一緒に入ったら、絶対我慢出来なくなると思ったから、遠慮したのに……こ

の小猫ちゃんは……」

(ちりん♪)

「え? え?」

「それじゃ、遠慮なく……覚悟はよろし?」

「お、お兄様(汗)」

「奴隷は、ご主人様の言うことに従うものだよ(にこっ)」

「あ……(ぽっ) ハ、ハイ、ご主人様(はぁと)」











「にしても、激しすぎるわお兄様ぁ……前も後ろも上も下もなんて……」

「ご、ごめん(汗)。嫌だった?」

「って言うか、クセになりそう(はぁと)」

「あ、そ……」

「でも、矢っ張りお兄様と一緒のベッドで寝ると、とっても安心するわね」

「2人とも裸だし……(汗)」

「この人肌が、いいんじゃない(はぁと)」

(ちりん♪)

「相変わらずチョーカーだけは着けたままだし――って、こ、こらそんなにく

っつくと……」

「またシたくなっちゃう?」

「下品!」

「あのね……浴室でのご自分の行為を、胸に手を当ててよぉ〜〜く振り返って

みてから発言して下さいませね(はぁと)」

「う゛……で、でもそれを言うならそっちだってぇ〜〜……」

「私はケダモノだもの♪」

(ちりん♪)

「うわ、あっさり」

「にゃあ〜」

「舐めない舐めない」

「みゃ」

「噛まない噛まない」

「じゃあ、どうすればいいのよぉ」

「大人しく寝なさい」

「それは嫌」

(むんずっ)

「ほぅ!?」

「お兄様が構ってくれないなら、こっちに構って貰うからいいです

よぉ〜だ」

「こ、こらちょっと、ほぉぉっ!?」

「…………」

「な、ならこっちも」

「ひゃん!? ちょ、ちょっとお兄さみゃうっ!!」

「…………」

「…………」



「「勝負!!」」




















 ――ダブルノックアウト。



「ふ、不毛だ……」

「さ、流石ねお兄様……もう教えることは何もないわ……」

「何を教わった、何を……(汗)」

「ナニを」

「下品!」

「ふにゅ〜〜……疲れたぁ……お兄様ぁ、腕枕ぁ〜〜」

「ハイハイ(くすっ)……それにしても今日は一体、何で急にこっちに来たの?」

「え?」

「連絡も入れずに突然来るんだもの。何か急用があったのかと思ったんだけど、

そうでもなさそうだし……」

「用がないと来ちゃダメ?」

「まさか。でも連絡くれれば、ずっと部屋で待ってることもなかったのに」

「お兄様のこと驚かせたかったし……抜き打ちで来ないと、浮気調査にならな

いじゃない(はぁと)」

「それが目的か……(汗) せっかくの休日なのに、僕の部屋でずっと1人で待

ってるなんて……それでよかったの? 友達と遊びに行ったりした方が――ん゛!?」

(ちゅっ)

「――んぅ…………ふぅ……お友達と約束した時は、遊びにも行くけど……優

先順位の問題よ。それに、お兄様を待つのは嫌いじゃないわ。そりゃあ、あん

まり待たされると不安になったりもするけど……将来の予行練習も兼ねて、ね(はぁと)」

「予行練習?」

「帰りの遅い夫を1人待つ新妻なんて、お約束の光景でしょ♪」

「で、待ちくたびれてベッドの上で寝ちゃう訳だ」

「そうそう♪ それで、帰って来てその姿を見た旦那様は優しく微笑みながら

そっとキッスを――ん!?」

(ちゅっ)

「――ん…………ふぅ……僕だったら待たせたりなんかしないな」

「……ウソばっかり……待ち合わせで待つのは、いっつも私の方じゃない……」

「そうだっけ?」

「そうよぅ……」

「おっかしいなあ……こんな可愛い子猫を待たせたりなんかする筈ないのにな

ぁ」

(ちりん♪)

「もぅ……じゃあ私、ずっと子猫のままでいようかな(はぁと)」

「じゃあ、これを機に小悪魔は封印と言うことで――」

「ダ・メ(はぁと)」

「あぅ……(汗)」

「お兄様をモノにするには、多少の狡賢さも必要だもの」

「女の子は怖いねぇ……」

「可愛いだけじゃ、レンアイには勝てないわ。ライバルは強敵揃いだし……で

も、今日はずっと可愛い子猫でいたいな♪ せっかく誰にも邪魔されず、お兄

様と2人っきりなんだし(はぁと)」

「はは……喜んで良いのか、な……?」

「さぁ〜〜気合い入れて甘えるわよぉ〜〜!」

「甘えるのに気合いを入れるな、気合いを(汗)」

「ムフフフ……覚悟はよろし?」

「…………お手柔らかに」

(ちりん♪ ちりん♪)






−おわれ−






(1st edition : 2000/06/07)
(2nd edition : 2001/05/23)

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