……困りましたわ。
「う〜〜ん……」
だ、ダメですわ。全然動けませ〜ん……にいさまったら、姫のこと抱き枕に
して、しっかりぎゅってしてるんですもの。
……にいさまにぎゅってされること自体は、全然困らない――というか、む
しろもっと抱きしめて欲しいんですけどぉ……(ぽっ)
でも、このままじゃ朝食の用意が、出来ませんわ。にいさま専属のお料理番
として、そんな失態を演じることだけは許されませんわ!
「……う〜ん、白雪……むにゃむにゃ……」
……も、もうチョットこのままでも……(ぽっ)
にいさまの温もり、にいさまの匂い、にいさまの鼓動……離したくない……
他のねえさまや妹達には悪いですけど、今は――今だけは、姫だけのものです
わ。
せめて、今だけは――
☆ Sister Princess ☆
<Short×2>
−sunny-side up−
「う〜〜ん……」
(ごろん)
「あ……」
にいさまが寝返り打った所為で、解放されましたわ……残念ですけどそろそ
ろ起きて朝食の準備をしましょう。
にいさまを起こさないようにそ〜っと、そ〜っと……
「きゃん!」
(どてっ)
……あうぅ……お、お尻打ちましたわ……(泣)
「い、痛たた……」
はっ!? 今ので、にいさま起こしちゃったかしら!?
「…………すぅ、すぅ……」
ほっ……大丈夫でしたわね。……でも……うぅ、まだ痛いですわ(泣)。後で、
にいさまにさすってもらいましょ……(ぽっ)
「ふん、ふふ〜ん、るるる〜〜……」
何だかこうしてると、にいさまの奥さんになったみたいですわ(ぽっ)。
毎日こうして、にいさまの朝食を用意してさしあげる、新妻白雪――
『はーい、にいさま召し上がれ!』
『う〜ん、白雪の作ってくれるご飯は、いつも美味しいね』
『も、もうにいさまったら、お口がお上手ですわ(はぁと)』
『ホントのことさ。白雪の作ってくれる料理は最高だよ』
『にいさま……(はぁと)』
『でも、僕にはもっと好きなメニューがあるんだ』
『え!? それはなんですの、にいさま! 姫には作れませんの!?』
『安心して、白雪。それは、白雪にしかできないから』
『姫にしか?』
『そう、白雪にしかできないんだよ』
『それは何ですの? 教えてください、にいさま!』
『もちろん。じっくり教えてあげるよ………………ベッドで』
『え!? そ、それって……』
『ついでに僕のお口が上手なのも、証明してあげるよ』
『い、いや〜〜ん!!(はぁと)…………じゃ、じゃあ姫のお口が上手なところ
も、お見せしますわ(はぁと)』
『ふふっ……望むところだよ、白雪……』
『にいさまぁ……ふぁっ、うぁぁぁぁぁっ!!』
――なんちゃって、な〜んちゃって! い、いや〜〜ん(はぁと) は、恥ず
かしいですわ! も〜〜、にいさまったらエッチなんだからぁ〜(はぁと)……
よしっと、はい! 出来ましたわ! そろそろにいさまを起こしましょ。
「にいさま! にいさま! 起きてください!」
(ゆさゆさ……)
「う〜〜ん……後、5分……」
「ダメですわ、にいさま! せっかくの姫の愛情がいっぱい詰まった、特製ブ
レックファーストが冷めてしまいますわ」
(ゆさゆさ……)
「う〜〜ん……後、10分……」
「増えてますわ、にいさま(汗)」
んもう、しょうがないにいさま。それじゃあ――
(ちゅっ)
「んっ!?」
「ん〜〜……はい! 目、覚めましたか? 寝坊助にいさま(はぁと)。白雪姫
のキスで目を覚ます王子様なんて、あべこべですわ。にいさまが姫を起こして
くれるんじゃありませんでしたの?」
「あはは、面目ない……それにしても白雪、その格好……(汗)」
??? にいさま、お顔が赤いですわ。どうしたんでしょ?
「何か、変ですの?」
「いや、だって……あ、そうだ! 白雪お尻打ったでしょう。大丈夫? 痛く
ない?」
「あ、そうでしたわ! まだ、チョット痛いんですの……あ、あのその、にい
さま……(ぽっ)」
「……さすって欲しい?」
「は、はい……(ぽっ) 痛いのとんでけって、して欲しいですわ……(はぁと)」
「ふふ……おいで。痛みなんか忘れさせてあげるよ………………気持ちよさで」
「い、いや〜〜ん!!(はぁと)」
「はふぅ、はふぅ……」
「だ、大丈夫?(汗)」
「はふぅ、はふぅ……んもう、さすってって言っただけですのにぃ。にいさま
のエッチぃ……(はぁと)」
「白雪だっていけないんだぞ。そんな――裸エプロンなんて、格好してるから!!(汗)」
「でも、これがにいさまの喜ぶカッコだって聞きましたわ」
「…………また、咲耶か鈴凛あたりに吹き込まれたな……(汗)」
むぅ!!
「にいさまっ!!」
「ハ、ハイっ!?」
「にいさまは今、姫と一緒にいるんですのよ! それなのに、他の女の人の名
前を出すなんて、デリカシーが足りませんわ!!」
「ほ、他の女の人って、兄妹じゃないの……(汗)」
「それでもですの!! 今は姫のことだけ、考えて欲しいですの!!姫だけの、
にいさまでいて欲しいですの!!」
……そして、いつかは――
「お願いですの……」
「……判ったよ。だから、泣かないで。僕は白雪の笑顔が――お日様みたいな
笑顔が大好きだから。だから、泣かないで。僕が白雪と会えない間、いつも白
雪の笑顔を思い浮かべていられるように、笑って欲しい――ね?」
「ぐすっ……判りましたわ」
「ありがとう」
……にいさまを、困らせてしまうなんて……反省ですわ。ごめんなさい、に
いさま……
「さ、それじゃあ、朝御飯いただこうかな?」
「あ、忘れてましたわ。温め直さないと……あれ?」
そういえば……
「あの……にいさま。どうして姫がお尻打ったの知ってるんですの?」
「ギクッ!」
むぅ!!
「にいさま! 寝たふりしてましたわね!」
「さ、さあご飯ご飯(汗)」
「もうっ! にいさ、きゃんっ!?」
(ガクンッ)
「おっと。」
「はぅぅ……ひ、膝がガクガクですわぁ……(泣)」
にいさまが、激しすぎるからぁ……(ぽっ)
「(クスッ)しょうがないなぁ――よっと」
え!?
「きゃんっ!?」
「取り敢えず、先にシャワー浴びよう、ね?」
「は、はい……ですわ(はぁと)」
で、でもちょっと、恥ずかしいですわにいさま……お姫様抱っこなんて……(ぽっ)
「あ、忘れてた」
「?」
「おはよう、白雪」
(ちゅっ)
「に、にいさま(ぽっ)。お、おはようございますですわ、にいさま(はぁと)」
(ちゅっ)
「(照れっ)さて、参りましょうか? 姫様」
「ふふ。うむ、苦しゅうないぞ! ですわ、にいさま」
「ふっふっふっ……………………隅々まで、洗ってあげるよ」
「い、いや〜〜ん!!(はぁと) 二段オチですわ〜〜!!」
「こ、腰が抜けましたわ……(泣)」
「ご、ごめんなさい(汗)」
「んもう、にいさまのエッチっちぃ〜〜……(はぁと)」
「あ、あはは……(汗)」
「それじゃ、朝食を温め直しますわ〜〜……」
(ガクガク……)
あぅぅ……た、立てませんわ〜〜(泣)。
「あ、白雪、僕がやるから白雪は休んでて……」
「ダ、ダメですわ! 姫がやりますわ!」
「で、でも……」
「ご飯の用意だけは、姫がやりたいんですの!」
これだけは……これだけは、姫がやるんですの! だって……
「これ位しか、姫がにいさまの役に立てることありませんもの……」
「白雪……それじゃあ――よっと!」
「きゃんっ!?」
「ほら、こうして後ろから抱きかかえてれば、立っていられるでしょう?」
「にいさま……ありがとうございますですわ(はぁと)」
「どういたしまして。でもね白雪。さっき言ったこと、ちょっと間違ってるよ」
「え!?」
「白雪は、ご飯作るしか役に立たない――なんて、そんなことない! 僕は、
白雪と一緒にいるだけで元気になれるし、白雪の笑顔を見てるだけで、暖かい
気持ちになれる。白雪には、白雪じゃなきゃ出来ないことが、たくさんあるよ。
だから、そんなこと言わないで」
(ぎゅっ)
「に、にいさま……」
「ほら、そんな顔しない! 僕は白雪の笑顔が好きって言ったでしょ」
「ハ、ハイ! ですわ(はぁと)」
ふふふ……にいさまに、ぎゅってされるとそれだけで幸せな気分になれます
わ。王子様なのに魔法まで使うなんて、にいさまってすごいですわ……
「はーい、にいさま! 召し上がれ(はぁと)」
やっと、朝食に辿り着きましたわ。長い道程でしたわ……(笑)
「今日の朝食は、白雪特製目玉焼き苺ソースがけですわ(はぁと)」
「むぅ……ソースの赤に目玉の黄が映えて、何ともはや……(汗)」
「ささ、カリカリに焼けた味海苔乗せトーストも召し上がれ(はぁと)」
「むぅ……(汗) い、いただきまぁす」
「いただきますですわ」
(ぱくぱく……)
「ところでにいさま」
「ん?(ぱくぱく……)」
「どうして、わざわざ寝たふりなんてしてたんですの? あ、別に怒ってる訳
じゃありませんのよ」
「……だって、白雪言ってたじゃない」
「え!?」
姫、にいさまに何か言ったかしら?
「僕より早く起きて、朝御飯の用意をするのが、白雪の喜びの一つだって」
「あ……」
にいさま、姫が言ったことちゃんと覚えててくれたんですのね……
ちゃんと、姫のこと考えていてくれたんですのね……
「にいさま……姫は――姫はしあわせですわ」
にいさまの妹として生まれてきて……
「僕も、しあわせだよ。白雪がしあわせになることが、僕のしあわせだから」
「にいさま……いいんですの? そんなこと言って。姫のしあわせはにいさま
と一緒にいることですのよ。そんなこと言われたら姫、一生にいさまのご飯を
作り続けますわよ?」
「白雪……」
そんなこと言われたら、益々にいさまを独り占めしたくなっちゃいますわ。
今だけじゃなく、ずっとずっと……
「覚悟してくださいね! にいさま!(はぁと) 姫なしでは、生きていけない
にいさまにしてみせますわ!」
……そして、いつかは――
「(クスッ)……お手柔らかに」
いつかは――
「大好きですわ……」
姫だけの――
−That's all.−
(1st edition : 2000/05/13)
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