(ぴんぽ〜〜ん)

(がちゃり)

「はぁ〜い、どちらさま……」

「にいさまっ!!」

「し、白雪!?」

「ハイ! にいさま愛しの姫、ただいま参上! ですわ(はぁと)」



☆ Sister Princess ☆
<Short×2>

−All-you-can-eat !−



「ふん、ふふ〜ん、るるる〜〜……」

 はなうたを唄いながら、くるくると踊るように、キッチンの中を動き回る白

雪。すでに勝手知ったる何とやら、手慣れたものだ。

「随分、上機嫌だね」

「だって、2週間ぶりですのよ。にいさまのマンションにお邪魔するの。

ホントなら、毎日こうしてお料理作ってさしあげたい……ですのに……」

 僕の問いかけに、せつなそうな表情を見せる。僕は、白雪のこの顔に弱い。

「……しょうがないよ、家からここまで遠いし。僕も平日は、何かと忙しいか

ら」

「だからこそですわ! にいさまったら、1人だといっつもインスタントで、

済ませてしまいますもの! 姫の大切なにいさまが、体でも壊したらと思うと、

心配で心配で……」

 瞳を潤ませて、すがるような視線を送ってくる。うぅ、この視線にも弱いん

だよね――って、僕ってよわよわ?(汗)

「だ、大丈夫だよ。たまにでも、こうして白雪がご飯作ってくれれば僕はいつ

でも、元気でいられるよ」

「ホント――ですの?」

「僕が、白雪に嘘言ったこと、ある?」

「……ありませんわ」

「なら、そんな顔しないで。せっかくの可愛いお顔が、台無しだよ」

「か、可愛いだなんて……に、にいさまったらぁ〜(はぁと)」

 なにやら、くねくねしだす白雪。しかし、先程から会話しつつも、料理する

手はまったく休ませないあたり、流石だ。っていうか、ほとんど手品だ……(汗)










「はーい、にいさま! 出来ましたわよ!」

 室内は既に、食欲をそそる香ばしい匂いで満ちている。

「うわ〜、今日もごちそうだね」

「うふふ……姫の愛情たっぷりですわよ(はぁと)」

 にこにこしながら、そっと腕を絡めてくる。

「今日のメニューはねぇ……白雪特製絶対元気の出るすっぽんトルテ! にい

さま、これで元気いっぱいになって、姫とたっくさん遊んでね……きゃっ(はぁと)」

 僕の腕を取ったまま、頭を左右に振っていやいやする。しかし、相変わらず

白雪の料理は、その、ちょっと、何だ、個性的というか……まあ味は文句無く

最高なんだけど、見た目がね……(汗)

「ささ、にいさま、召し上がれ(はぁと)」

「う、うん。……いただきまぁす」










「ど、どうでしたか、にいさま? お味の方は?」

「…………」

「にいさま?」

「…………き」

「き?」

「きたきたきたきたぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!」

「に、にいさま!?」

「……ふっふっふっ……たぁぁぁあっぷり、遊んであげるよ白雪。ついでに、

メインディッシュも一緒に、いただこうかな?」

「え!? で、でも、もう全部にいさまが、食べちゃったから他には何も……」

 あるさ、とっておきの大好物が。僕は、そっと白雪の肩に両手を置くと穏や

かな微笑みを浮かべた。

「遊ぼうか……………………………………ベッドで」

「い、いや〜〜ん!!(はぁと)」










「はふぅ、はふぅ……」

「ちょ、ちょっと、がつがつしすぎたかな?(謎)」

「んもぉ〜〜、にいさま激しすぎますわぁ……はふぅ……」

「ご、ごめんね。……その、白雪があんまり……」

「?」

「か、可愛かったから、つい……」

 途端、ぼんっと音でも出そうな勢いで、真っ赤になる白雪。

「も、もう……にいさまったらぁ(はぁと)」

「ごめんね」

「うふふ、大丈夫。姫も、にいさまにいっぱい愛されて、満足してますわ(はぁと)」

 もじもじとしながらも、笑顔ではっきりそう言って、しがみついてくる。



 僕の大切な――



「ふわぁ〜……何だか、眠くなってきましたわ……」

「今日は、泊まっていく?」

「いいんですの!?」

 ぱっと花が咲いたように、満面の笑顔になる。僕の大好きな笑顔。この笑顔

のためなら、僕はいくらでも強くなれる。白雪の望むにいさまになれる。

「明日の朝は、王子さまのキスで起こしてあげるよ。白雪姫」

「い、いやぁ〜〜ん。そんな事言われたら、ドキドキして眠れなくなっちゃい

ますわ……むふん(はぁと)」

 うにゃ〜、とかいう擬音でも付きそうな感じで、くねくねしながら照れる姿

が、何とも言えず可愛らしくて、思わず笑みがこぼれてしまう。つられて、白

雪も笑い出す。しばらく、2人でくすくす笑っていた。

「……にいさま」

 ひとしきり笑いあった後、僕に腕まくらされた白雪が、そっと囁く。

「なぁに?」

「……愛してますわ……」

 夢見心地で、そっと瞳をとじる。

「……白雪……」

 まわしていた腕で、そっと抱き寄せながら僕も瞳をとじる。

「愛してる」



 僕の大切な――






−That's all.−






(1st edition : 2000/05/10)

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