「気に入らない?フン」
「気に入ってんのよ」
「気に入った、っていう言い方、ちょうどいいわ。
とても気に入った。とても気に入った。
とっても、気に入ったの」
「たいした絵じゃない。流行ともかけ離れてる。
センスも悪い。萌えない。エロくない。へた。
もうどうしようもないくらい、しょんぼり」
「でも。あなたのキャラ、死んでないわ。
どっかの上手い先生サマのアートかぶれた絵なんかとぜんぜん違う。
それって……
アナタが死んでないってことだ」
「ありきたりでおしきせでどこかの誰かの間でだけ流行ってるってハナシの局地的な萌え〜〜〜とかなんとかなんかぜんぜん関係ないって感じ」
「メガネとかブルマとかツインテールとか黒タイツとかニーソとかロボとか妹とかメガネとか首輪とか鼻ピアスとかぜんぜん関係ないって感じ」
「ただたんにかわいい女の子を
かわいく描きたいってだけの
ピュアでプリミティブなヤツって感じ」
「純粋に純粋に純粋にただ、かわいい女の子の絵を
描くのが好きで好きでたまらないって感じ」
「そーゆー感じ、キライじゃないの」
「えっちな女の子の絵を描きたいんでしょ?」
「かわいくてやらしくて萌え萌え〜な女の子の絵を
描きたくて描きたくてしょうがないんでしょ?」
「描きたいだけ描けばいい。自己満足のオナニーなら誰も止めない。
描いて描いて描いて描いて描きまくればいい。
でも、そのオナニーを他人に見せたくなったら。マスかいてゴハンを食べようって勇気があるなら。
今のアンタじゃ無理だ。
欲望に忠実なだけのシロートが、一人で生き残れるほど、この世界は甘くない。
この場所はアンタが思ってるよりもずっと暗い。
アンタより100倍凄い連中が200倍努力して年間600もの作品を市場に送り込む、戦場。
作るヲタと買うヲタが真剣に勝負する戦場。」
「それが、エロゲよ。」
「アンタはあたしの運命の相手だと思う」
「この手をつかめば、アンタをもっと深い世界に連れてってあげる。
いやーんな世界よ。
最悪で最低で最高に最凶なアタシたちの世界よ」
「一度知ったら、ただのヲタクには戻れないわ。
なにも知らない単なるヲタクには戻れない。
それでも。アンタはこっちに来る資格がある」
「アタシには、アンタを連れて行く覚悟がある。
アンタがその気なら、一緒に見に行く準備がある。
最低な場所の最高の景色を」
「堕落する準備はOK?」
「あたしは可憐。美芝可憐。」
「パートナーを探してるの。
あたしがこのサイテーの場所で生き残るために、ね」