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国見岳 室堂

高い順に114,115,116番目を巡るはずの山行。今回は長文です。悪しからず

10月07日
朝、高尾発6:15の松本行きに乗る。列車が進むにつれ、段々いい天気に。
松本から特急に乗るかどうか、天候と時刻表をにらめっこして悩む。特急だと室堂着13:10、普通だと14:25。
1時間違う。前者だと、国見岳往復2時間としても余裕だし。

松本09:31着。臨時開設の切符売場で「特急はあるか」と問う。要領を得ないがどうも無さそうと判断し、
6番線の45分発の臨時快速に荷物を置き、餌の買い出しとトイレに駆け込んでから向かいの1番ホームを見ると、
39分発の特急が動き出している。 しまった! と思ったものの後の祭り。 

乗った快速は半分以下の乗客しかいない。夏とは大違い。大町に近づくにつれ、段々怪しい天候になる。
山沿いには雨雲が。大町で「一の越山荘」にTEL。「大荒れですよ」、『明日は良くなるでしょう』、
「明日いつになるか判りませんよ」の会話を交わす。これが実に的中。

室堂まで7030円の切符を買う。大町は曇りだったが、扇沢は風混じりの雨。視界500m。トロリバスは10分前に出た
ばかり。で、50分待ち。軍手だと寒そうなので毛糸の手袋を買う。

着いた黒4ダムは視界2km、係員に言わせると、「皆さんはラッキーです。天候が良くなりましたから」だとか。
外は雨なのに・・・。そのケーブルカーはギュウ詰め。隣のザックカバーの滴が服を濡らすし・・・。
黒部平ではロープウェーを40分ほど待つ。団体客優先のようで一般客は後回し。2Fの食堂は団体専用との断り書きがあるし。
中国語、韓国語が飛び交う。外は雨で暇つぶしする場もないが、傘をさして出てみると、
大観峰がかすかに見える。紅葉はまあまあだが、ほとんどガスで白。ようやく乗ったロープウェーも真ん中に詰め込まれ
外は見えず。着いた大観峰も白一色の視界200m。

 黒部平から大観峰方向を。          大観峰からの霧に霞む紅葉。この画面が2日後には変身・・・。

さっさと室堂に出る。当初予定を遅れること2時間の15時前ようやく着く。
案内所で国見岳へのルートを聞くと「道はないよ。それに無積雪期は立ち入り禁止」なのだとか。
「雪が有るときは山スキーで登っているけど。5月末ぐらいまでと10月末以降か」
「10月末ぐらいは雪が軽くて潜るからやめた方がいいですよ・・・。」などと、言われてしまう。

やむなく、5月末に来ざるを得ないかなと諦め外に出る。ガス+雨以外になにか落ちてくる。2mm角の氷。みぞれだ。
あわてて合羽・スパッツで重装備。

視界200mで外を出歩く人はほぼいない。一の越に向かう。背中からみぞれが押してくれる。そのうち、先行者に追いつく。
ナナカマドの赤い葉がいい感じの小岩なのだが晴れていればなー。これが2日後の変身にはびっくりする(後述)。

祓い堂でお賽銭。無事下山できますように。すぐに道がジグザグの登りになる。
顔が室堂方向を向くと、とたんにみぞれがバチバチ当たる。手袋で影をつくり、顔を背け、
薄目を開け、這々の体で進む。出発して45分、あちこちびしょぬれでようやく一の越山荘着。

 ナナカマドの赤い葉:2日後を見てね。   バチバチの正体:大きさ2-2.5mmの氷。一の越山荘前のドラム缶上。

まずは乾燥室に濡れたザック、カバー、雨具一式を持ち込む。約3時間でからんからんに。
じたばたしてもしょうがないから、食堂のストーブ前で小屋備え付けのミステリー小説をまず1冊。
外を偵察するも、風+氷混じりの雪が舞っている。酒飲んで明日に期待しよう。

写真左:10月07日 夕食             写真右:その後を示す、24時間後の夕食 


10月08日 朝から雪と強風。止む気配なし。五色ヶ原方向への道は小屋の西斜面。
昨夜の積雪でふさがってしまい、45度ぐらいになる凍結斜面になっている。1歩踏み出せばつるり。
50mは確実に落下。アイゼンは持ってこなかったし・・・。

  朝の玄関前:吹雪で見えない。             外の気温 高し。

10時まで待つが天候に変化無し。五色ヶ原山荘にTELし、予約をキャンセル。下山することに。
重装備に身を固めいざ出発。正面から氷粒がバチバチ当たる。約7−8分後、祓い堂に着く。視界20−30m。
ここまでは登山道の石積みが見えていたが、道が急に判らなくなる。進行方向は顔バチバチで見つめられないし、
視界もきかず立ち往生。やむなく引き返す。
ところが、5分ぐらい前につけたはずの足跡がもう消えて無い。這々の体で山荘着。またびしょぬれの雨具を乾燥室に持込む。
入れ違いで出発した3人も30分ぐらいして戻ってきた。今日は、小屋連泊客20名ほど。 
ストーブに当たりながら、だべったり、ミステリー小説を読んだり。時々外を眺めるが相変わらず雪が舞っている。
TVでは北側30kmの白馬と南側25Kmの穂高で遭難のニュースも。

3冊目を読み終えた16時頃、ドドッと屋根の雪が落ちる。明日は晴天と聞く。ビールで身体を冷やし、「とりす」で暖め
、4冊目を抱えて部屋に向かい、読み終えて寝る。風も収まった様だ。



10月09日
04時50分 起床。窓から見る景色は・・・窓ガラスが雪と氷で被われていて良くみえないが晴れてそう。
防寒用に服をあるだけ着込み、5:10外に出る。しかし、どうやら日出は雄山の尾根に掛かりそう。 
どうしても浄土山方向に移る必要がある。小屋の西側は急傾斜のカチコチ斜面。アイゼン無しでは50m落下は確実。

5:15東側は雪が柔らかく、小屋の南側まで回れたが、小屋西側の急傾斜のカチコチ斜面に突き当たり。5回ほどキックしても
5cmぐらいしか確保できない。わずか3mの距離、3点確保で抜けるのに10分以上。

5:30 小屋を離れること10m。足跡がある。先行者がいるのかな?でも靴跡とはちょっと違う。20mぐらい先の岩の塊
まで続いていた。
        
さらに登ること8分、ようやく日出が拝める中腹の場所に着く。 
空の色が変わり、雲が輝き始めた5:46 3日ぶりのお日様を見る。  ↓ クリックすると拡大1500*514


振り向けば、丸いお月様が稜線にかかる。回りもピンク色に変わって行く。↓ クリックすると拡大1600*600


さて、朝食にと小屋に帰る・・とたんにスッテンコロリン。結構頭に響く。少し下って、また転ぶ。
岩場を過ぎ、気になってた足跡を確認すると、どうも熊。へー。いるんだ!と半信半疑ながら、小屋に帰着。

小屋人に聞くと「いますよ。普段はずっと下に。足跡が有りますよ、ここは餌もないのになあ。」
電話でも感じた「ぶっきらぼう」であるが、なんともやさしげな語り口で話す。

朝食を食べ、下山のはずが・・・・・。偵察に出て、悩む。下山道が凍っていて歩けない。で、また転ぶ。雪の積もってい
るところを選んで、雄山に3−40mほど登る。北ア南部が一望のもと。槍と笠のとんがりがよく判る。


今朝、向かいの浄土山中腹までのぼったんだなー。

小屋泊の20人はアイゼン無し。しかも高齢者。そこで道作りのボランティアを始める。雪の吹き溜まりを選んで・・・・。
これが固くてNG。8本爪アイゼンを履いた人が助っ人。

約80mぐらい道をつけ、下から上がって来た人とようやく合流。約1時間かかった。小屋人たちも登山道下側の雪だ
まりに別ルートで階段を作っていたが、一人が足を滑らせ、ほんとに50m落下。

陽が上がり、ようやく氷もゆるんだ8:30 下山開始。写真左:階段状のステップが造られた臨時の道。

写真右:前から3人目が小屋人。4人目は2日間缶詰になった小学校1年生。祖父+祖母と3人で登山。えらい目に
あったね。

せっかく自分のつけた道だからと、小屋人たちのつけた道は通らず下る。滑ることなく快調に。
途中登ってきた中学生6名とすれ違い。全員がズック靴。件の小屋人がリーダーの中年に小言。「なに考えて山に登るのか」と。
確かにこのまま雄山に登れば、滑落必至だし。この2日間に遭難も起きたことだし・・・。言うことごもっとも。

ともあれ、先を急ぐ。二日前のななかまど、さすがに面影無し。雪の威力のなせる業。↓ クリックすると拡大1600*600

   左が10月9日 9:00前時点、         右は10月7日 15:30頃のななかまど。 

   9:05 室堂山荘近くから左に曲がり、「アルプス見晴台」に向かう。
   振り返ると白と黒のコントラスト。バックは剣御前〜別山付近
    


9:43一汗かいて登り着いた見晴しは格別。行く予定だった五色ヶ原を前景に槍、笠、黒部五郎、薬師を一望の下に。
       
     ↑ クリックすると拡大1600*800

眺めることしばし。5分ほど道を引き返し、小さめの足跡が1つ続いている所に戻る。国見岳への先行者がいるようだ。
ここから国見に向かう。9:55。片道1時間かな。
最初、人の足跡と思って入ったが、どうも熊のよう。途中から稜線方向に向かって這い松帯に消えた。
兎、てん?(きつね?)、ねずみの足跡がいくつか。

這い松帯に突き当たり、往生。這い松の短い場所を選んで下る。ほんの7−8m。
ここから道が判りにくくなってきた。歩き始めは単なる雪原で快調だったのだが、
這い松帯を越えた所からゴロゴロ岩の急斜面が〜鞍部〜山頂まで続いている。
  
  這松帯は、写真手前の黒い部分。中央部を右斜下に下る這松の先は谷に。 

雪に隠された穴にずっぽり入らないようにゴロゴロ岩のあるルートを避け、稜線沿いに進む。
このため、這い松の上をバランス採りつつ歩いたり、這い松やダケカンバを掴みつつ急斜面をトラバースしたり、
岩を乗りこえたり。

北側の斜面は固く、キックしても足がかりができないところもある。やむなく走り抜ける。一歩目は予定通り滑ったが、
2歩目は雪を確保し、6歩目でやっと静止。難所を越えた。稜線を直登したり、這い松帯下部をトラバースしたり・・・。

帰路時撮影。国見岳山頂近くの軌跡(往復)。 ↓ クリックすると拡大800*600
  
赤太目丸は写真撮影位置から見える部分。 赤細目丸は見えない部分(上部2、最下部1の計3箇所あり)


10:49 ようやく国見岳山頂着。なだらかな山頂だったが、西のはずれまで来ると足場が滑りだす。やはり注意注意。
山頂からの南側を。紅葉と白があでやか。↓ クリックすると拡大2400*1085
  


      赤と白があでやか2種 ↓ クリックすると拡大1250*600  
    左は南面眼下見える赤と白(上記写真の左下部分拡大)、   右の赤は、大町にて調達、同白は国見岳山頂と奥大日岳東尾根)
    


登り途中からヘリコプターが飛んでいた。合計5機。救助の様。世話にならないようにと、もと来た道を慎重に下る。
ステップ付きの箇所は順調に。

来るときは、稜線沿いに這い松の上を来たが、これを避けるルートを物色。山腹を巻くルートが見えたのでこれを選ぶ。
が、傾斜の強い所はさすがに滑る。ステップ作りで時間を食う。

最後は巻き道を諦め、雪原をほぼ直登。ともあれ11:55 荷物をデポした登山道脇に帰着。昼を回ったので室堂へ急
ぐ。途中の斜面でグリセードを楽しみつつ・・・・。 
最後の斜面で、グリセード中に身体が左に回り、転び、頭をシェイク。これは効いた。大町に着くまでズキズキ。気づけ
ば右足の靴はびしょぬれ。キックしすぎたせいか底板にひび割れができていた。

ロープウェイの混雑を避けるべく、着替えないまま12:25 トロリーの客になる。案の定、大観峰で30分待ち。
この間に着替え。周りは赤、黄、緑、青の普通の秋の色に白い冬の色が加わり見応え十分。2日前と見比べると雲泥の差。

写真左:10月09日 12:42                 写真右:10月07日 14:18


写真左右:10月09日12:42−48

たまにはドドドと急傾斜の谷沿いに雪崩が走る。写真左:12:41雪崩れ前 写真右:12:45雪崩れ中(雪の幅増)


相変わらずギュウ詰めのロープウェイ、ケーブルカーを抜け、急ぎ足でトロリーへ。
                      夏季は赤いが、今日は白く輝く赤牛岳
      

トロリーもギュウ詰めのまま立つこと13分で扇沢、8分後発の路線バスで大町に着く。

車中でビールで乾杯。頭の痛さが消えて行く。
松本から17:02臨時特急(自由席の乗客は半数ほど:指定は満席)にて帰途についた。


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