フランスの中でもひときわ異彩を放つブルターニュの地。

古くは太古の民族「ケルト人」が住み、勇猛な彼らは独自の文化を大切に育て、後にブルターニュ公国を築きます。中世にフランス軍による侵攻を何度も受け、最後までフランス王国に統合されるのを拒み続けますが、后妃アンヌ・ド・ブルターニュの娘とフランス王フランソワ1世との婚姻により、ブルターニュは
14世紀にとうとうフランスに組み込まれました。

フランスの中に位置しながらも、民族的にはイギリスやアイルランドとルーツを同じくするブルターニュ人は、彼ら独自の言語文化を持っています。「ブルトン語」と呼ばれるそれは、英語やフランス語とは文法も発音も全く違います。「ゲランドの塩」の「ゲランド」という町の名も、言葉の響きから推測できるように、フランス語ではなく「ブルトン語」の名残をのこす名前なのです。

大西洋に突き出したブルターニュ半島は、特徴的な二つの地域に分けることができます。うっそうとした森が生い茂り、巨大な石がつらなる太古の遺跡が、在りし日の古代民族を偲ばせる内陸地方。もうひとつは、荒々しい大西洋に長い間さらされ、のこぎりの刃のようにするどく入り組んだ海岸が続く「コート・ソバージュ」(野性の海岸)と呼ばれる臨海地方です。

ブルターニュの海の恵みは、この「野性の海岸」からやってきます。規模の大きい漁港は北のサン・マロや西へ下ったキブロンなど。いわし漁業が盛んです。キブロンにある最大のオイルサーディン工場「ラ・ベル・イロワーズ」は、近海で揚がった旬のいわしを手作業で缶詰にしている老舗の軒です。また、牡蠣好きには有名なブロン牡蠣の故郷もここブルターニュ。まるい形とクリーミーな美味しさが人気です。その他、ラングスティーヌ(手長えび)、スズキの塩釜焼きなど、ブルターニュ沿岸のレストランでは、さまざまな魚介類がメニューを賑しています。

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