CTにより頭蓋骨内の脳の大きさが推定できるようになった。

頭部CTによる研究により、T-Rexの脳質量の半分以上を占める嗅脳(嗅覚をつかさどる部分)は、ほかに例のない大きさだったようだ。現在の動物と比べると嗅覚で腐肉を探すヒメコンドルでさえ嗅脳は小さく、おそらくイヌ科動物の嗅脳もティラノサウルスにははるかに及ばない。

T-Rex
は、イヌより鋭い嗅覚を持っていたはずで、この他にもソフトボール並みの眼球と直径2cmもの視神経を持つ視覚系の発達、慣性能率を高め敏捷性を増したと思われる長い尾の発達は、獲物を認識、区別、追跡するのに非常に役立ったであろう。


鼻の穴(鼻孔)から歯牙のついた上顎の上に咽頭に続く長い鼻腔があったと思われその上に嗅覚を司る嗅脳がのっていたと思われる。
                     眼窩   T-Rexの頭部
..     

..T-Rex の頭蓋骨のCT像  
                      上顎(歯牙)の上の黄部分が嗅球(嗅脳)

問題点

もしT−REXが、嗅覚消失、嗅覚鈍麻、嗅覚過敏などの嗅覚障害を患ったらどうなるのか、これが慢性的なものであったらどのような恐竜生活になるのだろう。

人間の鼻の生理学的・解剖学的見地から考えてみる。
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考 察

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人間の鼻腔を覆う鼻粘膜は、嗅部呼吸部に分けられる。

嗅部は鼻腔上部で嗅細胞のある部位である。鼻粘膜の嗅細胞が傷害を受けるとにおいを感じなくなる。 失われた嗅細胞を含む鼻粘膜は他の上皮で置換されるので、嗅覚の回復は困難である。
においに対する感覚の異常には、
嗅覚消失、嗅覚鈍麻、嗅覚過敏などの嗅覚異常がある。嗅覚異常は神経障害、アレルギー疾患、鼻疾患、薬剤等の原因で起こることがある。

呼吸部は鼻腔下部で呼吸気の通ずる道で、自律神経により鼻腔粘膜は一定周期で腫脹と収縮をして鼻腔の通気を調節している。多列繊毛上皮で覆われ、鼻腺が散在する。

吸入性抗原が鼻粘膜の血管に作用してアレルギー反応により血管透過性亢進がおき蒼白に鼻腔粘膜が腫脹し鼻閉症状水溶性鼻汁分泌過多などの症状がおきる。

嗅覚障害原因としては、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、急性鼻炎、慢性鼻炎がある。

TRexについての考察


鼻炎などの原因として、彼らの生息した時代の2億5000万年前の中生代三畳紀にはいると100mをこす巨大な針葉樹の森が出現、2億年前ジュラ紀に裸子植物のスギ、マツやヒノキが繁茂するようになり、草食の巨大恐竜(竜脚類は歯がなく咀嚼せず丸飲みした。)が全盛であった。

ジュラ紀末には衰退し、1億1000万年前の白亜紀となると被子植物が爆発的に拡がり地球が色とりどりの花で覆われるようになるのは被子植物(地球上の植物の80%)が全盛となる白亜紀末7000万年前頃である。

それに合わせるように歯で咀嚼する新しい種類の恐竜(鳥脚類)が大型化するようになった。恐竜の多様化・巨大化の誘因となった植物の急速な進化・多様化・爆発的な拡大を考えると恐竜達がその恩恵の陰でアレルギー性鼻炎など、かなりの影響を受けたのではないかと考えたくなる。


結論

特にT-Rexのように肉食恐竜で他の動物などを捕らえなくてはならない恐竜にとってCTでみても嗅脳の発達が著しいというように、深い森の中で生活するためには嗅覚は視力以上に大事な能力であったと思われる。

花粉アレルギーなどにより鼻粘膜がはれ鼻づまりまた鼻粘膜の嗅細胞が破壊されることでにおいが分からなくなる。さらに息苦しさ・くしゃみ・鼻水などの症状に悩ませられたのではないのだろうか。獲物を認識、区別、追跡し狩りをするための卓越した嗅覚という能力を失うことはT-Rexにとって、生死にかかわる事態だったと思われる。

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