熊 公 鍛 冶 工 房


熊公の工房における鍛冶作業の日誌
特別な事柄は印を付け『鍛冶作業記録』にも書き込みます

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2023年08月31日(木)
 工房着:午前9時30分  作業開始:午前9時50分−作業終了:午後3時00分
 工房の気温:32度

 8月も今日でお終いです。2023年も3/4が終わっちゃいました。すぐにお正月ですね・・・。1年前は本名手術 2回目を受けるため入院した日です。あれから1年です。6・7・8月と血尿は出ていませんが膀胱の調子はまだ本調子ではありません・・・。

 昨晩、2019年の9月2日に工房に来られた方『Yさん』からメールが有りました。なんとご自宅(借家)が火事に遭い、全焼してしまったと言うことです。焼け跡を発掘して以前お譲りしたマキリ型ナイフを探したものの見付からず、唯一『菜切り包丁』が見付かったと言うことでした。このブレードを再生出来るかどうかの問い合わせで、直接電話して欲しいと言うことだったので、工房に着いてすぐにお電話をしました。
 まずはお見舞いから・・・。ブレードは一部溶けた部分もあると言うことでした。再生は難しいと思う旨をお伝えしました。ただ、以前熊公が造った『菜切り包丁』のブレードで、鋼の出方が気に入らないのでそのままにしてある物が有ることを伝えて、お見舞いとしてこれを研ぎ直して送ると話しました。
 火事は全てを無くしてしまいますから怖いですね・・・。料理を作る為の刃物も無くなっちゃうわけですから苦労されて居ると思います。出来るだけ早くお送りしようと思って居ます。

 お電話した後はキュウリ・シシトウ・ピーマンなどの収穫、そして、タップリ散水してやりました。散水は本当にタップリと撒くので時間が掛かります。終了したのは10時40分頃でした。11時少し前から昨日鍛造した包丁を焼き鈍しの灰から取り出して冷間鍛造、ザッと面を削って罫書きをして切り出しました。

 切り出した後、コバを整えて、面を削りました。面が仕上がったところで鎚目付けをします。鎚目を付けるとどうしても歪みが出たり、棟部分が延びてしまったりします。そこでこれを修整してやりました。

 次に刃を削り出す作業です。ブレードは3mm位広めにしてあるので、刃付け寸前まで削って行きました。若干厚めのブレードですがそれでも薄いものですから刃付け作業でどうしても棟側にヤスリが当たって傷が付いてしまいます。鎚打ちして出来るだけ消えるようにしましたが、消え切れていません・・・。
 初消し終えてから刃先を削って焼き入れに備えました。

 
成型がほぼ終了したブレード

 ブレード右側には『保秀』、左側には依頼者の名前をローマ字で刻印しました。また、中子には地金として『野間道場』のボルトを使いましたから『NOMA』と刻印しました。明日焼き入れする前にロットナンバーを刻印します。

 ブレードの厚さですが中子の始まる部分は3.4mm・アゴの部分の棟側は3mm・ブレード中央部分が2.3mm・切っ先側が1.3mmとなっています。少し厚めの文化包丁ですね・・・

 今日刃付け状態にして鋼付けの様子を確認してみましたが、今のところ鍛接不良箇所は出ていません・・・。鋼の出方も良い感じです。

 明日は焼き入れ作業です。焼き割れや大きな歪みが出ないと良いです。焼き戻しを掛けて、ある程度研ぎを掛けてみようと思っています。明日中に仕上げられるかな・・・。
2023年09月01日(金)
 工房着:午前9時40分  作業開始:午前10時00分−作業終了:午後3時55分
 工房の気温:31度

 9月になりました。本当に時の流れが速く感じます。昨晩は『スーパー・フルムーン』でした。眺めてみましたが薄い雲がかかっていて綺麗には眺められませんでした。
 そして、今日は『防災の日』です。関東大震災から100年目と言うことです。大地震は来て貰いたくないものです。でも、首都直下地震は向こう30年間に70%の確率で起こると言うことです。嫌だな〜〜〜!!

 さて、今日はワイフのお友達に依頼された『文化包丁』の焼き入れ作業です。焼き戻しを掛けている間に静岡県の『Yさん』にお見舞いとしてお送りする『菜切包丁』を研ぎ直すことにして準備しました。

 畑の方は収穫出来るものは有りませんでした。キュウリは急激に元気が無くなり、花が咲きません。今年のキュウリは終わりのようです・・・。

 焼き入れ水は32度でした。氷塊を投入して21度まで下げました。焼き入れ前に包丁の柄に中子が納まるように加工して焼き入れ開始です。

 
          焼き入れの様子                危険温度帯はグラスウールに挟みゆっくりと冷却

 780〜800度位までゆっくりと加熱して(熊公はコークスの上に置くことはしないで炙るようにして加熱して行きます)、焼き入れ温度を1分ほど維持して冷却します。冷却時間は3〜4秒でしょうか・・・。ヤットコに伝わってくるグブグブ感が消えたと同時に取り出しグラスウールに挟んでゆっくりと冷却します。これによって危険温度帯をゆっくり冷却して焼き割れを防ぎます。
 冷却出来たところで190度で予熱しておいたオーブンに入れて、40分間焼き戻しを掛けます。焼き戻しを掛けている間に『菜切包丁』の研ぎを掛けました。

 焼き戻しを掛けている間に『菜切包丁』の研ぎを掛け、研ぎ終えたところで柄を取り付けました。このブレードは2019年12月06日に鍛造して、12月09日に焼入れしたものです。鋼の左右の出方のバランスが悪くて、更に棟部分に焼き割れか鍛接不良か筋が入っているので作品としてはカウントしていませんでした。こんなものをお見舞いに送るのは失礼かも知れませんが、料理する刃物もない状態であれば少しは役に立つものと思います。

 『菜切包丁』は4年前に研ぎを掛けてありますから研ぎは簡単です。丁度焼戻しが終わる頃に柄付けも完了しました。『文化包丁』は焼き入れ時の歪みは本当に少しだったので簡単に修正出来ました。すぐに研ぎに掛かりました。ダイヤモンド砥石の研磨力が下がってしまったので、先日300番の人造砥石を購入しました。これを使って研ぎましたが、気持ち良いくらい研げました。ダイヤモンド砥石は凹まないから良いですが、これからはこれを使います。ただ、研いでいる間にも凹みを取ってやる必要があります・・・。

 
作品No.1649 『文化包丁』

 
作品No.1650 『菜切包丁』

 硬度を測ってみましたが『文化包丁』も『菜切包丁』もHRC 60以上の硬さでした。包丁としては刃持ちが良いのではないかと思います。

 両方の包丁、いつものようにヌメ革がスクッと切れて、メモ用紙も気持ち良いくらい細く切ることが出来ました。両方とも喜んで貰えると嬉しいです。

 『菜切包丁』は明日『Yさん』に発送しようと思って居ます。それにしても火事は全て灰になってしまうから怖いですね。『Yさん』早く元通りの生活に戻れること祈ります。

 来週からは『伊蔵』さんに依頼を受けた忍具類の製作に取り掛かります。無理せず少しずつ仕上げていこうと思って居ます。
2023年09月04日(月)
 工房着:午前9時40分  作業開始:午前10時00分−作業終了:午後1時30分
 工房の気温:26度

 今朝は東上線が信号故障で動かなくなりました。駅からワイフがSOSの電話、そこで車を出してワイフの職場の最寄り駅まで送ってあげました。同じような車があって少々渋滞気味だったので裏道を使って走りました。通勤時間帯のダイヤの乱れは大変ですね・・・。

 今日は雨、畑の良いお湿りでした。台風13号崩れの低気圧の雨です。今週は雨のマークが多い週、畑の水遣りをしなくても済みそうです。工房に着いて畑を見回ったら、ピーマン・甘唐辛子・シシトウが元気になった感じでした。キュウリはやはりお終いのようです。7月28日に植えたキュウリがありますがこれは大きく成りそうにもありません・・・。3〜4本収穫出来れば元取れるのですが・・・。

 火事に遭われた静岡県の『Yさん』に送った『菜切包丁』ですが昨日届いたとメールがありました。大きさ・重さが自分好みだったと言うことでした。そして、『家財は失えども身体と最低限の道具があれば食ってはいけますので、日々生きていることに有り難さを感じつつ、精進して参る心づもりです。』 と綴られていました。元気出して再出発して貰いたいものです。

 前回研ぎを掛け持ち帰った『文化包丁』はやはりゆっくり眺めて居ると研ぎの気に入らない部分とかが見えてきます。一発でイメージ通りに出来ないのは未熟な証拠ですね・・・。そこで今日は研ぎ直しをすることにしました。

 
 
Before                                 After

 包丁は鎬作りにはしていませんが、鎬状の部分があります。前回の研ぎと今回の研ぎの様子を比べると分かると思いますが、鎬状の部分を引き上げる感じにしました。刃角は10度程になりました。
 また、アゴの上側、中子に向かう赤丸の部分、アールを少し緩くしました。


研ぎを掛ける際の目印

 研ぎを掛ける際、上の写真のようにマジックで目印を付けます。斜線部分が均等に研げていれば刃角は安定することになりますし、鎬線のマジックを消すようにして行くことで鎬線を引き上げていきます。研ぎ慣れている方はこんな事しなくても大丈夫だと思いますが、こうすることで砥石に何処が当たっているかイメージしやすくなります。

 最後は内曇砥で化粧研ぎしました。野間道場ボルトは良い感じに黒くなってくれます。このボルトは大正13年以前の鉄ですが、古い鉄には味わいがあります。これでこの包丁をお嫁に出すことが出来ます。

 今日から『伊蔵』さん依頼にの忍具製作に入るつもりでしたが明日からになってしまいました。1時過ぎでしたから作業可能でしたが、区切りを付けるつもりで今日は早めに帰路に着きました。
2023年09月05日(火)
 工房着:午前9時40分  作業開始:午前10時00分−作業終了:午後2時10分
 工房の気温:31度

 今日はまたまた暑くなりました。畑の師匠が来られていたので例のウリ科の植物の実を見てもらいました。やはり『冬瓜』のようです。大きくしてみると良いと言われました。新たに実が三個くらい付いていました。この植物を台にして伸びたキュウリは元気を無くしていますが、この植物は益々元気のようです。ちゃんと収穫出来るでしょうか・・・?

 シシトウとシソの葉を収穫しました。シソはなかなか大きく成ってくれませんがそれでもほんの少しずつ収穫出来るようになって来ました。床屋さんに届けられます。

 今日からはいよいよ『伊蔵』さん依頼の忍具製作です。三回に分けて送る事になっています。第1期目は『曲線型卍手裏剣』2枚と『角手』色々10個です。来週中には送ること出来るかな・・・?
 今日はまず『曲線型卍手裏剣』を鍛造することにしました。ネッククーラーを着けて作業しましたが暑かったです。ちゃんと気温を見て居ませんでしたが一度見たときは45度でした。外気温プラス10度位ですからヒョッとすると46〜7度になっていたかも知れないです。

 
十字に打って少し打ち延ばし先を細める               治具を使って卍型にしていく    ・
 
        卍型にした状態                  左のものを打ち広げて焼き鈍しを掛ける

 卍手裏剣は刃先を曲げる作業が有りますから手間が掛かります。ポイントとしては十字に打った後、先を細めるところ、そして、卍型に打つ際に気持ち深く曲げておくことでしょうか・・・。数作ってきたのでその辺のコツは掴めています。

 今日は焼き鈍しを掛けるところで作業終了としました。作業スタートしたときに1.3kgの両頭ハンマーの柄が折れてしまいました。このハンマーはかなり力強く打つ際に使用するので柄はよく折れます。その為予備の柄は複数揃えてあるのですぐにすげ替える作業をしました。このハンマーがないと手裏剣を十字に打ち広げて行く作業が出来ないです。
 また、今日は以前造ったヤットコを打ち広げて行く際に使いましたが、グリップ力があってなかなか使い良かったです。厚めのものを掴むときやコバ側を打つときは別として、おそらくはこれを常用することになると思います。

 明日は成形作業です。焼き入れまで行くと良いですが・・・。暑さに負けちゃうかも知れないです・・・。

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