戻る

図書紹介:『宇宙はなぜ このような宇宙なのか 人間原理と宇宙論』

  • 著者:青木 薫著   
  • 発行所:講談社現代新書、ページ数:253ページ
    発行日:2013年7月20日第一刷、定価:760円+税


『宇宙はなぜ このような宇宙なのか 人間原理と宇宙論』(青木 薫著,講談社現代新書)を読みました。著者は京都大学大学院で理論物理学を学んだ理学博士、翻訳家。 本書によれば、「人間原理」とは「宇宙がなぜこのような宇宙であるのかを理解するために、われわれ人間が現に存在しているという事実を考慮にいれなければならない」という考え方である。これはまさに「この世界は神が作った」という宗教的世界観に近いため、科学者たちはこの考え方に警戒感を持ち、拒絶反応を起こす人が多かった。著者もその一人であったが、ある翻訳をきっかけに宇宙の仕組みを理解するためには人間原理も毛嫌いしてばかりではいられないかもしれないという思いに至り、本書を書いたという。 本書ではまず人間がもつ宇宙像の変遷を歴史を追って説明している。古代の占星術、中世のコペルニクスの天球による宇宙像、ニュートンの無限宇宙、アインシュタインのリーマン幾何学に基づく一般相対性理論を使った宇宙像、そして最近のインフレーションモデル+ビッグバンモデルによる宇宙像、そして最後にひも理論による10次元世界と多宇宙(マルチバース)モデルを紹介している。著者によると最近、「宇宙はなぜこのような宇宙なのか」に対する科学者の考え方にパラダイムシフトが起こりつつあり、人間原理も毛嫌いせずに「いろいろな可能性があるなかで、宇宙はたまたまこのような宇宙だったかもしれない」と考える科学者も増えているという。このような本を読むとこの宇宙は「ユニバース」ではなく、「マルチバース」であるように思えてくる。気が遠くなるような話であるが、自分にとっては興味深い。
(2015年5月14日)
戻る