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図書紹介:『意識とはなにか−<私>を生成する脳』

  • 著者:茂木 健一郎  
  • 発行所:株式会社筑摩書房、ページ数:232ページ
    発行日:2003年10月10日第一刷、定価:700円+税


 私が小さいときから持ち続けている疑問の一つに、人間の意識とは何か?がある。 本書を読めば何かヒントが得られるかも知れないと思い、読んでみた。
 近年、脳科学は関心がもたれ、進展はしている。しかし、乗り越えることができない壁にぶつかっているという。それは、なぜ脳の中の神経活動によって、私たちの意識が生み出されるのか、が皆目分からないということである。 著者はこの壁を乗り越えるために、私たちの意識の中で<あるもの>が<あるもの>であることの不思議さを徹底的に考える必要があるといい、本書はそのための一つのガイドになることを目指している。
 著者は、私たちの意識の中で<あるもの>が<あるもの>として感じ取られるのは、さまざまな質感を表す「クオリア」(qualia)によると考える。私たちの意識とはクオリアのかたまりであるという。 本書では、このクオリアという考え方によって意識のいろいろな問題、例えば、同一性の判断、やさしい問題とむずかしい問題、「ふり」をする能力、コミュニケーションにおける生成、私の生成、意識はどのように生まれるかなどを考えていく。
 本書を読むことにより、科学的研究の糸口のない意識の問題をクオリアという考え方を導入して突き進もうとしている現状が分かる。 クオリア研究の今後を注目したい。
(2007年8月4日)
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