乙夜
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乙夜
偶然とは恐いものだ。旅先で街を歩いていたら、声をかけられたので、振り返ると見覚えのある顔がそこにはあった。
「やっぱりー、陽太君だ」
「うさ子…?」
陽太は、キツネにつままれたような顔で答えた。
「嫌だな、ちゃんと名前で呼んでよ。偶然ね」
彼女の名前は美月。小学校からの付き合いだ。いつもすぐ泣いて目を真っ赤にしていたので、うさ子、うさ子と呼ばれていた。不思議な縁で、誕生日も同時、クラスも同じ、進路もほぼ同じようだったはずだ。旅行までも同じなのか…。
「一人旅? 陽太君。カメラで何か撮っているの?」
首から提げていたカメラを指しながら美月が言った。

<後略>

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