大向こう関連の記述

江戸時代または明治時代といった古いもので
大向こうについてはっきりと書かれた本は
残念ながら残されていないようです。


現在でも大向こうについて書かれた本は数少なく
しかもその一部分がさかれているにすぎない場合がほとんどですが
その部分を取り出してご紹介することにしました。


大向うの人々

歌舞伎座三階人情ばなし

山川静夫著  講談社
平成21年初版発行

元NHKアナウンサーで寿会会員の山川氏が
歌舞伎座建て替えにあたり
昔の大向うの記録を残しておきたいと書かれた本。
すでにいろいろな本で発表されたエピソードに加え、
昭和の名人たち、ことに水谷謙介さんに
一章さいて詳しく書かれています。
第二章「大向うの成り立ち」で
古い文献の中に埋もれている記述をたどって
大向うの成り立ちを推理されている箇所も必見です。
大向うの会の変遷について書かれているのも今回がはじめてで
戦後の大向うの会にずっとかかわってこられた
山川氏ならではの詳しさです。

 


片岡仁左衛門芝居譚


十三代片岡仁左衛門著  河出書房
平成4年初版発行

先代仁左衛門さんは数多くの芸談を著していますが
この本にはわずか3ページですが昭和61年に
京都新聞のコラムにかかれた 「大向こうのかけ声」という文が
載っていて 掛け声の必要性、東京と大阪の掛け声の違いなど
役者さんの立場から述べられています。

 


嵯峨談語


十三代片岡仁左衛門著  三月書房
昭和51年初版発行

この本でも「おおむこう」と題して2ぺージ、
歌舞伎の芝居になくてならぬのは大向こうの掛け声であるとか
困った声などについて書かれています。

 


歌右衛門の疎開


山川 静夫著  岩波現代文庫
2003年初版発行

歌舞伎にも文楽にも大変に造詣の深い元NHKアナウンサー
大向寿会会員の山川氏の著書。
「大向うの人々」に11ぺージにわたって
昭和20~30年代の名物大向うたちのことなどが書かれていて
当時の大向うの雰囲気を彷彿とさせます。

 


人の情けの盃を

山川 静夫著 淡交社
昭和61年初版発行

「大向う」「不連続線」という章で掛け声について書かれています。
「大向う」は「季刊雑誌歌舞伎」の別冊に、
「不連続線」は「演劇界」に寄稿されたもの。
「大向う」の「やっぱり大向うのかけ声は本当に好きな役者に
そして名優にこそ与えられるべきものである」という
締めくくりの言葉が印象に残ります。

 


大向うとゆく 
平成歌舞伎見物
(いまようしばいけんぶつ)

樽屋 壽助著  PHPエル新書
2004年出版

大向弥生会会員の樽屋氏が
広く一般の読者むけに 著した歌舞伎入門書。
第三章「大向うの眺め」で41ページにわたって
掛け声について述べられています。
よくある大向うについての疑問に明快に答えつつ
声を掛けるさいの心得を書かれていて
初めて声を掛けようという方に役立つ本です。

 


歌舞伎通になる本


小山 観翁著  グラフ社

イヤホンガイドでおなじみの小山氏の著書。
4ページですが「かけ声のみなもと」というタイトルで
掛け声や大向うのことについて
なりたちや、ご自身の考えを述べておられます。

 


とにかく芝居が好き


片岡 孝夫著  大和書房
1981年初版発行

当代仁左衛門さんが若き日に書かれた本。
「うれしい『掛声』」という章で3ページ
役者さんの視点から掛け声には何が大切か
必要がないのはどんな時かというようなことが
歯に衣をきせずに書かれています。

 


勘九郎ひとりがたり


中村 勘九郎著  集英社
1992年初版発行

当代勘三郎さんが勘九郎時代に著した本。
第十五章「読破名優言行録」の前半で
掛け声について触れられています。
当代は掛け声について自由な考えを
持っていらっしゃることがわかります。

 


季刊雑誌歌舞伎
別冊歌舞伎舞踊鑑賞

野口達二編集 松竹株式会社演劇部発行
昭和49年発行

小池章太郎氏の「鏡獅子再見」の中で
「プロムナード 掛け声三回」と題して
鏡獅子の声の掛けどころを論じています。
当代勘三郎さんも鏡獅子には掛け声は三回で良いと
書いておられますし、ご参考になると思います。

 


物語り

中村吉右衛門著 マガジンハウス
1996年初版発行

女性から掛かる声について、「しきたり」の
「とちり蕎麦は僕もずいぶん出しました」というところに
興味深いお話が書かれています。

 


歌舞伎への招待

戸板康二著 岩波現代文庫

昭和25年に出版され、最近再版された名著。
最後の「俳優」という章に1ページほど
掛け声について厳しいご意見を述べておられます。

 


楽屋のことば

戸板康二著 駸々堂出版
1986年初版発行

「大向」と題して4ページ書かれています。
大正から昭和の初めの大向うの様子などが伺えます。

 


松緑芸話(げいばなし)

尾上松緑著 講談社
1989年初版発行

「新皿屋舗月雨暈」の章の最後に少し六代目と大播磨の
掛け声に対する好みの違いについてふれています。

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