デルスウ・ウザーラ
沿海州探検行
アルセーニエフ 著
長谷川 四郎 訳  
平凡社
『デルスウ』は30年前からの夢だった/黒澤 明
 「デルスウ・ウザーラ」の映画化は、ぼくが30年も前から考えていたことことでした。まだ助監督だったころ、たまたま探検記が好きで、「デルスウ・ウザーラ」の原作を読んで、デルスウという人物がとても好きになった訳です。(中略)
ぼくは、デルスウのような、自然の中でただひとり暮らしている人間、それで、たいへん自然を大事にし、尊敬もし恐れてもいる人間、その態度こそ、いま世界中の人がいちばん学ばなければならないところだと思います。

はじめに その2 資料
ページ 樹木 内容
19ページ ハギ
ミズナラ
アムールシナノキ
シラカンバ
 イオズ河谷の右側は、ゆるやかな沼沢性の斜面がつづき、やつれた草やハギの藪や、ミズナラアムールシナノキシラカンバなどのまばらかな林におおわれている。斜面と斜面の間には水は細長い、いくつかの峡谷をうがっていた。
27ページ ヤエガワカンシラカンバ
タモ
マンシュウクルミ
イタヤカエデ
ハンノキ
キハダ
オンコ
エンジュ
ハコヤナギ
アムールシナノキ
ハシバミ
サンザシ
ガマズミ
シモツケ
ハギ
イオズ河(ウデヘ語でイェニイ)はどういうわけか海図にはウラディミロフカと記されていて、小さな河とされている。河谷の幅は約3キロ、左手高く山地になっているが、右手はゆるやかな斜面があって、ハコヤナギ、シラカンバ、カラマツがまばらに生えている。・・・・・・・・そして、山がはっきりと山らしい性格をおびてくる。ここにはミズナラのほかに、ヤエガワカンシラカンバ、タモ、マンシュウクルミ、イタヤカエデ、ハンノキ、キハダ、オンコ、エンジュ、ハコヤナギ、アムールシナノキ、それから潅木ではハシバミ、サンザシ、ガマズミ、シモツケ、ハギが生えている。
30ページ サルヤナギ 以前の河床や支流に沿って生えているサルヤナギの林の中に時おりエゾライチョウを見かけた。
32ページ タモ
エゾノダケカンバ
ハンノキ
エゾマツ
カエデ
オガラバナ
シラカン
ウラボシザクラ
密林(タイガ)
私がほんとのタイガなるものを想像しようとすると、その度に私はシナンツァの河谷を思い浮かべるのである。ここにはタモ、 エゾノダケカンバ、ハンノキほか、オホーツク系植物の一代表者であるエゾマツやカエデらしくない葉をつけ赤い枝をしたオガラバナや、シラカンバように、黄色い樹皮をして枝を地上に折り曲げてそのためクマを少なからず困らせるウラボシザクラ・・・・・
33ページ ハリスグリ
シロミノミスギ
ドロノキ
シベリアマツ
ハシドイ
エゾウコギ
ヤブブドウ
特に注意を引いたものはハリスグリであって、これはうんと小さな、柔毛の生えた、円形の葉をつけている。またシロミノスギもあったが、これはやわらかい長い枝と、上部には暗い縁、下部には白味をおびた披針形の葉をもっている。
頭上には枝は絡み合って、空はまったく見えない。とくにドロノキシベリヤマツはおどろくべき大きさだった。これらの下にかくれて生えている樹齢四十歳の若木林は弱弱しい幼樹にみえた。ハシドイは普通は潅木のように生長するものだが、それがここでは喬木のようで、高さ十メートル、周囲が1メートルもあった。古い倒木はコケでゆたかにかざられ、大変装飾的な様子をしていて、それをとりまく豊かな植物群とすっかり調和していた。
森のヘリや中に生えている低い林は、エゾウコギヤマブドウやクズでできていて・・・・・・・
45ページ ダウリカカラマツ
ガマズミ
ハシバミ
ハギ
キンロバイ
ナナカマド
ビャクシン
海沿いに北へいくにつれて、満州的植物は一ずつ、うしろへ去った。まずナシの木がみえなくなった。われわれは最後にそれをイオズヘ河畔でみた。それからスミエンジュ−これはテルネイ湾がその北限であるらしい。もっと北へ進出しているのモウコナラ。ここにたくさん生えているダウリカカラマツが海辺に小さた群れをなしてあらわれてきた。ここにたさん生えているガマズミ、ハシバミ、ハギのほかわれわれはキンロバイの、五片より成る羽状の葉や特徴的な淡黄色の花を槻察し、それから、ほとんど昧のない小さな薄赤い果実をつけて叢生Lているの丈の低いナナカマドと、これとならんで地に這いひろがり、去年の枯れた漿果をつけて、くすんだ青い微光をはなつ、よく茂った緑の枝々を上のほうへ向けいるビヤクシンを観察した。
46ページ イタヤカエデ
マンシュウクルミ
アムールシナノキ
ヤエガワカンバ
リュウリンタイ
アカヤナギ
ハギ
シモツケ
ノバラ
ガマズミ
水源においてベーや河は東に転じ、ほとんど海に接している。路は中国人が谷間の右手の崖に沿ってつけたものである。この小河がめぐり流れている山には、イタヤカエデ、マンシュウクルミ、アムールシナノキ、ヤエガワカンバが特に多い疎らかな林が生えている。川辺にはリュウリンタイとアカヤナギが密生している。明け放しの場所にはハギ、シモツケノバラ、ガマズミがしげっている。
49ページ シモツケ
ハシバミ
ハギモウコナラ
ハンノキ
アディミル河の谷間には、薪にはなるが、あまり値打ちのない性質の潤葉樹が生えている。山のいるところに山火事のあとがあった。地面の断層や斜面にはシモツケ、ハシパミ、ハギのよく茂った藪ある。さらに山へ入るとモウコナラやハンノキがし生えている。河の両岸に沿う広い砂利地帯や、河床の中に積みかさなった倒木群は、ここには大洪水はないが、雨季には水の流れが強くなって、岸をはげしく洗いながすことを物語っている。
51ページ チョウセンマツ
ハンノキ
エゾマツ
最初のセクム(ウデヘ語でセクトズヴ)は長さ五キロの小川であって、海岸に平行した山脈の間を流れている。オデガ(ウデヘ語で処女の意)は中国語でオデゴウといい、第一、第二ともに同じ河口をもつ。一つは長さ十ニキロ、他は十五キロ。この二つを分けている山脈は同じくオデガといい、平均高度一五〇メートル。これは東に向かってだんだん低くなり、海岸で潤葉樹や小さたシラカンバの疎林の生えた小高い台地とたって終わる。オデガ第一の河谷には樹質のよくない混成林が生えているが、ただ水源ちかくなると、チョウセンマツ、ハンノキ、エゾマツがそれぞれ分かれて生えている。ぐるりの山々の大部分は山火事のため、焼けてしまっている。
52ページ ハシバミ
ノバラ
ヤナギハギ
シャキラの河谷はかなり狭,ぐて、ただ水源ちかくで広くなっている。その地盤は石だらけであって、山にはいたるところ石堆が露頭している。草木は主としてニガヨモギ、シダ、アカエンドウで轟るが、河沿いにはハシバミ、、ノバラ、ヤナギ、ハギの叢林が生えている。海に近い疎林はハハソ樹と、それから潤葉樹より成るが、河に沿ってのぼるにつれて密にたり多様になる。
56ページ ヤマハマナス
バラ
シモツケ
ハギ
ピリンベ ―それは植物の王国である。河の両岸は欝蒼とした森であって、河が廊下の中を流れているようである。ところどころ大木がかたむいて枝々をまじえ、きれいなアーチを形づくっている。
小さな支流の岸には太陽の光とともに湿気も必要とする藪が茂っている。ここで私の押花集につぎのものが加えられた。ヤマハマナス。これは刺のバラ、小さな垂れさがりた葉と中位の大きさのもつ。また、バラ色をした柳葉形のシモツケ。はハギとともに深い薮をつくっている。
58ページ エゾマツ
ヤマナラシ
ハシドイ
そして森へいき、なまのエゾマツヤマナラシハシドイなどを切りはじめた。どれも火にはじけてばちぱち音たてる種類である。
薪がたくさん集まると、彼はそれを大きく積みかさねて火をつけた。明るい炎がたちのぼり、数千の火の粉が空中をとびまわった。薪が炭化すると、デルスウは叫びながら、それを四方八方へまきちらしはじめた。
61ページ ミズナラ
ドロノキ
アムールシナノキ
シホテ・アリニヘ近づくにつれ、森は深くなり、ますます倒木でふさがれていた。ミズナラ、ドロノキ、アムールシナノキは姿を消して、ヤエガワカンバのかわりにシラカンバがあらわれてきた。
足もとにはコケがあらわれた。そのほかマンネングサ、シダの一種、オシマスゲ、ヒメミヤママカタバミが多く生えている。

62ページ イソツツジ
エゾマツ
カラマツ
ハンノキ
ラバを休ませてから、また前進した。深い緑の針葉樹の疎林と、イソツツジの藪、またコケの厚い敷物がシホテ・アリニの西面をおおっている。・・・・・中略

翌日はシホテ・アリニの西面を観察することにした。ここには真の渓流はない。水は音もたくコケの下をにじみ流れている。小河はエゾマツ、トドマ、カラマツ、ハンノキの生えた、低い両岸の間を静かに流れている。
72ページ ドロノキ
ジャンバオが先頭にたってわたっていった。腰まで水につかり、手に棒をもって、彼は対岸ちかくまでゆっくりと歩いていき、底をさぐってみた。調査の結果、ここでは河が二つに分かれ、たがいに三十メートルはなれていることがわかった。第二の流れは第一のそれよりも広くて深く、流木でふさがれていなかった。棒は流され、底をさぐることができなかった。デルスウとジャンパオはドロノキの大木を切りたおしにかかった。やがて兵士らが横鋸をもってきて手つだった。膝の上まで水につかって、彼らは一心にはたらいた。十五分もすると、木はめりめりと折れて、大きた音をたてて水中に倒れた。ドロノキの幹ははじめ少しぱかり流されたが、すぐ何かにひっかかってその場によまった。この橋をつたって、われわれは第二の河床をわたった。それからあとは五十メートルほど、水びたしになった林だった。もうこれ以上、水路のないことを確かめてから、われわれは引きかえした。

73ページ シラカンバ
カラマツ
イタヤカエデ
アムールシナノキ
ミズナラ
海に近づくにつれて森はまばらにたり、単調になった。シラカンバ、カラマツ、イタヤカエデ、アムールシナノキ、そして薪になるミズナラがそれぞれ群落をなして、ところどころに生えている。
85ページ アムールシナノキ 旧信徒
シャオケム河の惟とり、海から一キロ徒半のところに旧信徒のイワン・ボルトニコフが住んでいた。彼の家族は、彼とその妻と二人の成人した息子と二人の娘よりたる。われわれの出現櫨ひどく彼らをびっくりさした。女たちは子供をつれて小屋にかけこみ、かんぬきをかけた。われわれが通っていくのを、彼らはおず騎ずと窓からのぞき、誰かの視線にぶつかると、すぐにかくれてしまった。さらに半キロほど進んで、河の岸のアムールシナノキの年とった林の中に野営した。

87ページ マンシュウクルミ
ミズナラ
イタヤカエデ
ヤエガワカンバ
ドロノキ
ニレ
アムールシナノキ
ガマズミ
シモツケハギ
ミヤマハンショウヅル
谷間に分散してマンシュウクルミの茂った丘が、沼沢地や、また、植物の生えた石だらけの地帯と交互になっている。そのあいだに河は多数の支流をうがっている。最近の降雨のため、どれも水でいっぱいだった。これらのゆるやかな斜面は水に洗われてできた河成段丘にほかならず、それらは樹齢一五〇〜二〇〇年のミズナラ、イタヤカエデ、ヤエガワカンバ、ドロノキ、ニレ、アムールシナノキの疎林でおおわれている。

サクホマ河
サクホマの河谷の下生えはいたるところ、ガマズミ、シモツケハギの藪でできていた。われわれは藪の中に入りこんでいるミヤマハンショウヅルを見つけたが、これは冬を越す固い茎を付近の木にのばして、タンポポのような白い綿毛のある粘着性の蔓でそれにからみついていた。
100ページ シベリヤマツ
ドロノキ
イタヤカエデ
ハンノキ
ウラボシザクラ
イバラ
ナナカマド
タラノキ
ヤマブドウ
ミヤママタタビ
タケマの河谷には力強い原始林が生えている。それはいまだかつて人間の手がふれたことがたい。自然がわざわざこの場所をえらんで、大地の成長がいかなるものであるかを示そうとしたかのようである。
シベリアマツ、ドロノキ、イタヤカエデ、ハンノキ、ウラボシザクラ、イバラ属、ナナカマド、オオメギ、タラノキ、ヤマブドウ、ミヤママタタビ、クズがここで人間の通れない大密林をつくってい・そこをいくことは、ナイフを持ち、ひじょうに努力を空費して、着物を藪に残したりして、はじめ可能なくらいである。
109ページ ブドウ
カエデ
太陽はなんとなく変わってきた。それはもう夏のような光をもたず、遅くおきて早く寝についた。地上の草は枯れはじめ、一様に黄ばんでーきた。木の葉もしぼんできた。最初に冬の到来を感じたのはブドウとカエデだった。彼らはダイダイ色や紫紅色やスミレ色の色調でわが身をかざっていた。
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