ジャワマメジカ
Lesser Mouse Deer (Tragulus javanicus)
「豆鹿」とは、よく言ったものだと思う。
名前の通り、マメジカと言う生き物は非常に小さな生き物である。
大人でもウサギくらい、子供に至っては掌にすっぽり納まってしまう。
ネズミジカと言う別名もある。
原産国の幾つかでは、
彼等は類まれなる知恵者として伝説に登場する。
さながら「因幡の白兎」宜しくワニを騙して向こう岸まで渡ってしまうマメジカの昔話や、
落とし穴に嵌まってしまったマメジカがイノシシやトラを騙して助けて貰う昔話、
更にはクマの尻尾が短くなってしまう日本の「尻尾の釣り」に類似した昔話など、
様々の愉快な昔話が伝えられている。
昔話に登場する、頭脳で強敵をやり込める知恵者は、
為政者に虐げられて来た民衆の怒りの具現化だ、と言う説を聞いた事がある。
ひょっとしたら、東南アジアの人々は、
森の中で健気に生きるマメジカの姿に、
自分達の姿を重ねて昔話を構築していったのかも知れない。
<データ>
*分類*
哺乳綱 偶蹄目 マメジカ科
*分布*
東南アジア各地の森林地帯
*大きさ*
頭胴長30〜47cm、体高20cm前後、尾長5〜8cm、体重0.7〜2s
*食性*
植物食。主に木の葉、木の芽、落果、根菜等を食べる。
飼育下での食餌実験では動物質も食べる事が判明しており、野外でも屍肉や小動物などを摂食している可能性がある。
*備考*
最小の偶蹄類。おとなでもウサギほどの大きさしかなく、
産まれたての子供に至っては人間の掌にすっぽりと納まってしまうくらい小さい。メスの方がやや大きい傾向がある。
シカと名がつくモノの、遺伝学的には寧ろラクダの仲間に近い。
ツノを持たない代わりに、オスの口には鋭い牙が一対生えており、オス同士の争いの折に武器として用いられる。
森林の奥に通常単独で棲息し、野生での暮らし振りはあまり明らかにされていない。
性質は用心深く、概ね夜行性。驚くとウサギのように強く足踏みし、周囲の仲間に危機を知らせる習性がある。
一説には赤外線感知能力(ノクトヴィジョン)や、人間には聞こえない高音域の音波を聞き取る能力を持っているとも言われる。