■ IPアドレス拡張技術
IPアドレスの枯渇まであと359日!
わ。
続けてくるとは思わなかった。やりますね。
「Webか、なにもかも懐かしい…。」
繰り返しがギャグの基本とはいえ、見苦しいですよ博士。
…ネット君も言うねえ。
ええ、担当教官の薫陶をよろしく受けまして。
…。
さて、IPアドレス枯渇の問題を解決するための、拡張技術の話だったな。
えぇ、前回はCIDRでしたね。
クラスを無視した(クラスレス)、ネットワーク集約技術がCIDRだったな。
クラスBだと余るので、クラスCを複数つかうことによってその無駄を省こうっていうのが、前回の例でありましたね。
今回はより無駄を省こうとする技術だ。
サブネットの最適化、というべきかな。
サブネットの最適化?
うむ。
同一ネットワーク内で、使用していないIPアドレスを減らそうという技術だな。VLSMという。
びるすーむ?
何故無理やり読むのだ。
素直に、ブイエルエスエム、でいい。
だって、CIDRで「サイダー」と読ませたじゃないですか。
母音がないのに無理して読むことはないだろう。
母音があったからといって、WYSIWYGは読めるとは思えませんが。
それはまた別問題だな。
まぁ、確かに最初聞いたときは、帝国の旗艦がどうした?と思ったが。
ですよね。
■ IPアドレッシング(クラスフル)
ともかく。
まずは、ネット君に課題を解いてもらおう。
[FigureRT02-01:IPアドレッシング・課題]
3つのルータと、5つのサブネットから成るネットワークが存在する。各サブネットには、20台のホストが存在する。
192.168.1.0/24をあげるから、IPアドレスを設定しなさい。
なめられてます?
いや、いたって真面目だ。
そうそう、ルータ間もネットワークだということを忘れないように。あと、ゼロサブネットも許可する。
了解。
サブネットが8つなので、ぴったり3ビット。ホスト5ビットで台数もおっけ〜と。
できました。
[FigureRT02-02:IPアドレッシング・解答] ▼
うむ、よくできた。
で、次は?
何故次があるとわかるんだね?
だって。
これで終わったら、3分間ネットワーキングと変わらないじゃないですか。
なるほど。その通りだ。
で、大変悪いのだがネット君。新しい部署ができたので、20台ホストが入るサブネットをもう1つ作ってくれ。
はい〜?
わかってると思うが。
新しいIPアドレスはあげれないので、そこのところよろしく。
[FigureRT02-03:IPアドレッシング・最課題] ▼
ちょ、ちょっとまってください。
もうIPアドレスがありません。
いや、ホストが20台入るサブネットが6つで120台。
各ルータが4つインタフェースをもつので、12台分。まだまだ余裕があるはずだよな?
数だけみればそうですが。
何故だ?
どこが無駄になってるんだ?
え〜っと。
ルータ間のサブネットワークですね。30台分のうち、2つしか使っていないですね。
そうだ。
2つしか使わないのに30台分割り振るとは、ネット君も剛毅だな。
そんなこといったって…。
原因は、すべてのサブネットワークに、同じサブネットマスクを使うところにある。
2台しか使わないなら、2台だけ入るサブネットワークにすればいいじゃないか。そう思うだろう?
確かにそう思います。
■ IPアドレッシング(クラスレス)
そうした場合、こうなる。
[FigureRT02-04:IPアドレッシング・VLSM]
このように、使うサブネットの大きさに合わせて、サブネットマスクを切り替える。
これがVLSMだ。
ふわ〜。
ちょっと、アドレスとサブネットマスクの関係がわかりづらいかもしれんので、表にしてみた。
まず、VLSMを使わず、普通に/27でサブネット化した場合だ。
DEC | BIN | SM | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
サブネット0 | .0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | /27 |
サブネット1 | .32 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | /27 |
サブネット2 | .64 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | /27 |
サブネット3 | .96 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | /27 |
サブネット4 | .128 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | /27 |
サブネット5 | .160 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | /27 |
サブネット6 | .192 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | /27 |
サブネット7 | .224 | 1 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | /27 |
[TableRT02-01:サブネッティング]
これはわかります。
さっきの課題では、サブネット0〜4をサブネットに。5〜7をルータ間に割り振ってましたね。
そうだ。上の表のやりかたではそれが限界だ。
VLSMでは無駄が多いので、最後の192.168.0.224/27をさらに細かく分割する。
DEC | BIN | SM | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
サブネット0 | .0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | /27 | |
サブネット1 | .32 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | /27 | |
サブネット2 | .64 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | /27 | |
サブネット3 | .96 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | /27 | |
サブネット4 | .128 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | /27 | |
サブネット5 | .160 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | /27 | |
サブネット6 | .192 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | /27 | |
サ ブ ネ ッ ト 7 | A | .224 | 1 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | /30 |
B | .228 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | /30 | ||||
C | .232 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | /30 | ||||
D | .236 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | /30 | ||||
E | .240 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | /30 | ||||
F | .244 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | /30 | ||||
G | .248 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | /30 | ||||
H | .252 | 1 | 1 | 1 | 0 | 0 | /30 |
[TableRT02-02:VLSM]
これで、30台のサブネットが1つ減った代わりに、2台のサブネットが8つできたことになる。
上の例では、元サブネット7のA〜Cをルータ間のネットワークに割り振ったわけだ。
はわ〜。
VLSMを使用しない場合、例のようにルータ間で3つのネットワークを使うとすると。
最大台数は、サブネット5つで、30 x 5 の150台。
VLSMを使用した場合、サブネットが0〜6までの7つ使えることになるから。
30 x 7 の210台。すごい、全然違う!
うむ。
さらにVLSMを有効活用すると、この状態では元サブネット7のD〜Hを使っていない。もったいないから、こうする。
DEC | BIN | SM | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
サブネット0 | .0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | /27 | |
サブネット1 | .32 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | /27 | |
サブネット2 | .64 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | /27 | |
サブネット3 | .96 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | /27 | |
サブネット4 | .128 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | /27 | |
サブネット5 | .160 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | /27 | |
サブネット6 | .192 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | /27 | |
サブネット7 | .224 | 1 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | /28 | |
サ ブ ネ ッ ト 8 | A | .240 | 1 | 1 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | /30 |
B | .244 | 0 | 1 | 0 | 0 | /30 | |||||
C | .248 | 1 | 0 | 0 | 0 | /30 | |||||
D | .252 | 1 | 1 | 0 | 0 | /30 |
[TableRT02-03:VLSM2]
ルータ間のサブネットを先ほどのD〜Hにし、使わない/30の4つのサブネットをまとめて14台可能なサブネットにしてしまう。
これで先ほどよりも14台増えて、224台まで可能になる。
すごいや。
まさしく、IPアドレスの最適化ですね。
うむ、限界はあるが、サブネットマスクを必要な台数分によって変化させることにより、無駄なくIPアドレスが使用できるようになるのだ。
なるほど。
■ VLSMの条件
もちろん、これを使うには条件がある。
ネット君わかるか? CIDRの時と同じだ。
CIDRの時と同じ…。
ルーティングの問題だ。
あ〜、そうか。
サブネットマスク(プレフィックス長)の情報がなければ、上手くルーティングできないですね、これは。
そうだ、またしてもルーティング・プロトコルが対応してないと駄目なのだ。
は〜、納得。
うむうむ。
次回もIPアドレスの拡張の話だ。
了解。
…。
ところで博士?
なんだ?
次回は、「IPアドレスの枯渇まであと358日!」とか言ったりしないですよね?
…。
博士?
…。
さ、30分間ネットワーキング、また次回〜!
あ、こら…、ちょっと〜!
- あと359日
- くどいようですが嘘です。信じないように。
- VLSM
- [Variable-Length Subnet Mask]
可変長サブネットマスク、と訳される。
- WYSIWYG
-
[What You See Is What You Get]
ウィジウィグ、と読む。
画面で見た形で印刷できたり、文書化できたりする事をさす。GUIの基本概念。
- 帝国の旗艦
- 皇帝砲を持つ。って、それはグリグオリグ。
- ゼロサブネット
-
サブネット部をゼロにすること。
ネットワークのネットワークアドレスと、サブネットワーク0のネットワークアドレスがわからなくなる可能性がある。
- 図
-
わかりやすいように、第4オクテットの2進数表示をのせます。
.0:00000000
.32:00100000
.64:01000000
.96:01100000
.128:10000000
.160:10100000
.192:11000000
.224:11100000
- 図
- 見やすいように、各サブネットの第4オクテットとサブネットマスクのみ書いています
- IPアドレスがありません
-
20台のホストが必要なので、ホストに5ビット必要。
残り3ビットで作成できるサブネットは8つ。
よってサブネット6つと、ルータ間サブネット3つの計9つは無理。
- 数だけみれば
-
サブネット8つ。
各サブネットの最大ホストは5ビットで30台。
8 x 30 = 240台
- ハイパーネット君の今日のポイント
-
- 使用台数によって、サブネットマスクを変えることにより使わないIPアドレスを減らすのが、VLSM。
- ルーティングプロトコルが対応してないと駄目。