原告第8準備書面

 以下は、2005年1月19日に提出した準備書面である。固有名詞は必要に応じてイニシャルとした。
2004年12月20日に、弁論は終結しましたが、裁判長が1月中に書面を提出すれば受け付けると言ったので、私たちは提出することにしました。


 被告準備書面(7)について、次のとおり反論する。

1. プロスタサイクリンの適応について

 (1) 被告らは、「亡E子の肺高血圧症の原因が慢性肺血栓塞栓症であることから、プロスタサイクリンによる肺高血圧の低下が期待できない。」と主張している。
 しかし、亡E子の病態の場合でも、プロスタサイクリンによって、肺高血圧(甲B19の肺動脈平均圧と同じ)は有意に減少している(甲B19・p.2197)。

 (2) 原告らは、「プロスタサイクリンは、亡E子の病態についても有効であることが示唆されており、生命予後を改善させる効果がある(甲B19・p.2196-8及びp.2196の図1-右)。」と主張してきた。

 (3) 甲B19号証は、肺高血圧症の治療に最多の経験を持つ国立循環器病センターの医師の執筆によるものである。甲B19号証は、プロスタサイクリンが、亡E子の病態にも適応され、効果があることの根拠となる証拠である。

 (4) 被告らは、被告医院の呼吸器内科医師が明らかにしたように、プロスタサイクリンの経験は全くない(甲A6)。

 (5) 結局、被告らは、上記の被告らの主張の根拠となる証拠を提出していない。
従って、被告らの「効果が期待できない」との主張は、医学的裏付けがなく、かつ誤りである。

2. 肺聴診におけるラ音について

 (1) ラ音は、左心不全でみられる所見であり、右心不全ではみられない(乙B8及び乙B9)。

 (2) 被告らは、「肺高血圧症は、基本的には右心不全の症状、所見を呈することになるが、進行すれば左心不全の症状、所見も呈することになる。」と主張しているが、原告らが知る限り、“進行すれば左心不全の症状、所見も呈することになる”というような内容を書いた医学文献はない。また、被告らも被告らの主張の根拠となる医学文献を提出していない。

 (3) 肺高血圧症の臨床所見では、肺野にラ音は聴取されない(甲B7・p.1160)。甲B7号証は、国立循環器病センターの医師の執筆によるものであるが、上記の臨床所見は、肺高血圧症では右心不全の所見がみられ、従ってラ音は聴取されない、と言っているのと同じである。

 (4) 亡E子は、カルテによれば、外来、入院を通じて、右心不全のみであり、ラ音は聴取されていない(乙A1及び乙A3)。

 (5) 以上から、本件の場合、被告らのように「肺聴診でラ音を聴取しないことは、右心不全を否定する根拠にもなりうる。」と主張することは、誤りである。

以上


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