【原作とアニメについて】

 おおよそ原作漫画のあるアニメーションでは、キャラ設定や解釈の違い、世界観の違いによって、原作ファンがアニメを批判する構図がそれこそアニメの歴史とともにあったといってよいでしょう。はるか大昔の『鉄腕アトム』では、原作者の手塚治虫氏自身がアニメ製作の指揮をとって徹底的にやったという話が伝説になっていますが、あまりのこだわりぶりに赤字まみれで製作スタッフは息もたえだえだったとか。つまり、仮に原作者がアニメ製作に本格的に関わろうとしても、組織的・経済的事情によってそれはほとんど不可能であるのが現実なのでしょう。
 それゆえに、原作ファンとアニメファンと中立ファン(どちらも楽しむ人達)の間では、作品解釈や嗜好が当然異なる宿命(ちと大袈裟な表現ですが^^;)にあります。アニメ化に同意した時点で、原作者自身が中立にならなければならないわけですね。

 『犬夜叉』の場合は、原作におけるキャラ間の複雑な関係や、キャラ個人の複雑な背景が「子供に明確にわかるものでなければならない」ゆえにアニメで迷走した時期がありました。善玉と悪玉を明確にせよとされる一方、桔梗というキャラに対する制作者の想い入れが強すぎたため、キャラ解釈(性格設定)が一貫性を失ってしまい、私のような原作至上主義者には実に観るのか苦痛になっていきました。原作を愛する者はどうしても色眼鏡で観てしまいますから、アニメとしての正当な評価はできない。それを百も承知のうえで、私は逆の見方をすることにしています。

 すなわち原作あってのアニメという見方ではなく、原作とアニメを別次元で存在する作品として比較し、改めて原作の魅力を語ってみたいと考えるのです。
1.原作ならではのシーン

 これまでアニメで一切描写されなかった(つまりはカットされた)原作の場面を列挙しますと、
   コミックス第6巻第2話(33頁3コマ目〜42頁6コマ目)
   コミックス第6巻第9話(164頁1コマ目〜4コマ目)
   コミックス第8巻第4話(72頁5コマ目〜74頁4コマ目)
   コミックス第8巻第10話(180頁1コマ目〜186頁6コマ目)
   コミックス第10巻第1話(17頁3コマ目〜18頁5コマ目)
   コミックス第15巻第2話(38頁1コマ目〜40頁5コマ目)

 これらの場面が原作においてどういう意味を持っているか、重要度はどんなものであるか、読んでいただければ一目瞭然だと思います。仮にこれらの頁とコマをそっくり取り去ってしまえば、おそらく『犬夜叉』という漫画作品のイメージは相当変わってしまうでしょう。私的には「これぞ原作の魅力」という場面のめじろ押しなので、まだ原作コミックスを読んだことがない方は、上記の部分だけ流し読みしてみるのも一興です。

2.かごめの言霊「おすわり」

 かごめは連載第3話で楓が犬夜叉の首にかけた念珠に対して、とっさの思いつきで「鎮める言葉」として「おすわり」という言霊を作ります。念珠は犬夜叉自身には外せないため、かごめが「おすわり」と唱えれば犬夜叉は全身を地面に叩き伏せられることになります。さて、原作のかごめが「おすわり」をやるのはどんな時かといえば、
  A.犬夜叉が第三者に対して乱暴しそうになる
   コミックス第3巻第4話,第5巻第1話,第6巻第7話,同第8話,第11巻第9話,
   第14巻第10話,第18巻第2話,第21巻第3話,第24巻第5話の9回
  B.犬夜叉が第三者に対して無神経な言葉を吐く
   コミックス第24巻第1話,第24巻第5話の2回
  C.犬夜叉が自分の行動を邪魔しようとする(自分の身の安全確保や言い間違いも含む)
   コミックス第1巻第3話,第2巻第4話,第3巻第5話,第4巻第7話,第16巻第9話,
   第23巻第6話の6回
  D.犬夜叉の言動で自分が傷つき、怒る
   コミックス第1巻第6話,第2巻第10話,第8巻第9話,第26巻第1話の4回

 合計21回(コミックス第27巻現在)です。AとBで50%を占めています。初期の頃は骨喰いの井戸での「帰る帰るな攻防戦」のようにCやDで連発してますが、第9巻以降になるとめっきり減り、AやBにほぼ限られています。第16巻も妖怪化した犬夜叉を鎮めるためのものだし、第26巻では久しぶりにDで一気にやりましたが(^^;)、つまり原作では自分の気分が害されたために「おすわり」をくらわすケースが少ないのです。しかしアニメの彼女は…以下略(-_-;)。
3.アニメの視聴率

 全体的に関西地方は関東地方より常に2%ほど高いようです。双方の平均でみてみると、まず第1話から第20話(狼野干)まではそれなりに好調で、16〜17%を確保しました。 ところが第21話・22話の1時間スペシャル(かごめ復帰,桔梗と三角関係形成)以降下がり始めて第23話から第37話(鋼牙登場)までは14〜16%の間を上下します(この間で16%を越えたのは第35話(りん登場)だけ)。
 第38話から第44話(悟心鬼,闘鬼神)までは15〜18%と肩上がりで回復しましたが、第44話を最期に監督が交代します。皮肉なことに池田監督の最後の担当になった第43話,44話では17〜18%とピークを記録します。
 監督が青木氏に代わった第45話から第64話(黒巫女椿オリジナル)までは16〜18%を確保します。第55話の直前には劇場版第1作『時を越える想い』が公開されたこともあって知名度がアップしたことも影響したでしょう。しかし3月に上映期間が終わった後、4月に入って第65話から第67話(神楽一時逃亡)まで15%以上を保ったものの、第68話以降(オリジナル、無双編、オリジナル、紫織編、オリジナル、殺生丸VS奈落、オリジナルと交互に続く)14%前後から14%未満へ降下中です。2002年4月以降から観なくなった人が増えてきた感があります。

 こうしてみると「犬かごカット、桔梗さま暴走、三者性格設定迷走」の三点セットで原作ファンから抗議が殺到していただろう第21話〜第37話のあたりでは、視聴率の低下傾向も監督交代への圧力になって働いた節があります。第38話から第44話で右肩上がりに回復したものの、スポンサーの懸念もあって強制的にキャラの性格設定を修正させられたことに反発した池田監督自身が辞任の意志を固め、これを翻すことができなかったのかもしれません。
 原作に追いついてしまうのを避けるため、第59,63〜65,68,72,75〜79,83〜84話と現在まで13回の完全オリジナルが作られたわけですが、これらの平均視聴率は14.6%と、現在までの全体平均視聴率15.6%を1%下回っています。
 アニメ界全体の傾向からすればこの数字は健闘といえますが、第68話以降の低落状態は懸念材料でしょう。まだ10%を割り込んだことはないものの、13%前後でウロウロしていると、打ち切り検討の対象になりかねない情勢ですね。劇場版第二作の公開や七人隊の登場で再度視聴率を回復させられるか、が秋からの正念場でしょう。                               [初出;「吉岡本舗」(管理人;吉岡ママさん)掲示板「犬物語」]
4.あえて書きます(苦笑)

 私がかごめ贔屓を公称しているので、先日のアニメ「犬桔1時間スペシャル」にさぞ激昂して猛批判するのだろうと思われる方は多いでしょう(^^;)。そのとおりではありますが…私が批判する観点は、ちょっと違います

 実に久しぶりに録画して視聴した私の第一印象はといえば…「何をいまさら」でした。

 アニメにおける生前の桔梗と犬夜叉が「口づけを交わした仲で、犬夜叉は夫婦になろうと口に出す寸前だった」という描写に激怒している犬かごサイトが多いようですが、私は「あれはあれで筋が通っている」とさえ思います(おいおい『生きているうちにこうし』てたんじゃん、というツッコミはありますがね^^;)。なぜなら「そこまでの仲だったからこそ」アニメ桔梗は例の大暴走(犬夜叉の喉元に懐刀つきつけ『抱きしめればモノになると思っている』とか『お前は私を殺せない、あはははは』とか)に至った、ということで納得もいくからですよ。原作の改竄だとか根底からの覆しだとか、それはその桔梗様大暴走の時からわかっていたことです。

 そんなことよりも…S氏の脚本が残酷すぎる

 犬夜叉の乱暴を抑えるために言霊の念珠を作り、懐から出そうとして思いとどまる描写とか、破魔の矢でなく封印の矢で時を越えるという御神木(時代樹?)に犬夜叉を打ちつける設定とか、節々で第1話のシーンとつないでエンディングにはアニメ名場面集をもってくる手法とか、素直に唸るし賞賛したいところもあることはあります。

 しかし。

 やはり私は「S氏の演出と、趣味が合わない」んです。どうしようもなく。

 犬桔初対面の場面で桔梗がしつこいまでに「半妖、半妖、半妖…」と呼びかける。これは犬夜叉が心に抱えている劣等感をこれでもかと突きまくる言葉の暴力なんです。名前を聞いてから犬夜叉と呼び、恋仲になるのはいいにしても、桔梗に化けた奈落までもが犬夜叉を襲う時またしても「半妖」と呼ぶ。ダメ押しのトドメ差し(-_-;)。

 母親が息子に口紅を与えますかね? あれは犬夜叉の方が母の形見として自分の意志で持ち歩いていたものと考えるべきだけど、それを桔梗にあげて桔梗がそれを嬉しそうに使う、というのもなにか違和感があります。そしてこの口紅も、ニセ犬夜叉によって貝殻ごと桔梗の眼前で粉々に砕かれてしまう。演出効果満点(-_-;)。

 誕生したばかりの奈落は妖怪集団を使って意味不明の村襲撃をやらせ、それだけの邪気に気付かなかった(!?)桔梗は自分の眼前で妹の楓が右目を失うところに出くわしてしまうそんなことがあった後に、あの責任感の強い桔梗が犬夜叉と逢い引きしますか? たしかに楓のナレーションどおり「危うさを感じた」(-_-;)。

 劇場版第一作…かごめが瑪瑙丸に操られ、犬夜叉にとって最大のトラウマ「惚れた女に矢を打たれて胸を貫かれる」。雲母が操られて珊瑚と戦わされる。
 劇場版第二作…犬夜叉が神久夜に操られ、もうこりごりだ、嫌だと骨身に染みていた妖怪化をやらされ、仲間を傷つける
 劇場版第三作…犬夜叉が叢雲牙に操られ、またも妖怪化してかごめに刀を振り上げる

 なぜかこういう描写を「残酷だ」という人は少ないですが、とにかくS氏は「洗脳されて仲間同士で傷つけあう」という演出がやたらにお好きなようです(他作品でもそういう脚本が多い)。その意味では今回の犬桔スペシャルも、いかにもS氏好みのシチュエーションだったわけですね(洗脳じゃなくて変化の罠ですが、「愛し合った者同士を引き裂く」演出にさぞノリノリだったでしょう)。原作の奈落も顔負けだ(>_<)。

 「キャラクターの心を踏みにじる演出なくして感動的な描写はできない」ってか? 私にはこの疑問がアニメ犬夜叉を見る度に絶えず続いています。少なくとも、高橋留美子氏の描く世界とは決定的に異なる部分です。

 アラ探しするな!とお怒りの方も多いでしょうけど、私はあれに「原作 高橋留美子」とテロップが流れると、原作の桔梗と犬夜叉の苦痛の表情を感じます

 最近の原作連載で、犬夜叉が鉄砕牙に四魂の欠片を入れる場面がありますが、あの後の展開に原作者・高橋氏のポリシーが表れています。邪気に耐えられずに妖怪化しかけた犬夜叉を見てかごめはどうしたか劇場版第二作【鏡の中の無幻城】での演出とどう違うか。ここは実に象徴的です。

 このコーナーの冒頭で書いたように、私は「原作とアニメを別次元で存在する作品として比較し、改めて原作の魅力を語ってみたい」のですが、もう断言しましょう。

 アニメはキャラクターの心を道具にしています視聴率稼ぎのためにね。だからその都度キャラの性格が右に左にコロコロ変わる。薄っぺらで安っぽくなる。S氏にとって、所詮この作品のキャラクターとは「道具」なのでしょう。おそらく本人は大河ドラマを紡ぎ上げたおつもりなのでしょうが、彼の手法は犠牲が大きすぎます

 劇場版パート4が製作決定したそうですが、またS氏が脚本演出担当でしょうね。またご都合主義の迷走キャラを見せられるのかと思うと、原作ファンの端くれとして虚しくなってきます。

 心ある【犬夜叉】読者の方々に声を大にして申し上げたい。アニメと原作を混同しないでいただきたい原作【犬夜叉】キャラを誤読しないでいただきたい。それに尽きます。よーく読んでください。アニメとは全然違った魅力的なキャラクター達が、原作コミックスの中にいて、皆活き活きとしていますから。
5.アニメ視聴率にみる原作との関係

 アニメ犬夜叉がまもなく最終回を迎えることも公表され、拙サイトでもこの考察テーマで一通りの総括をしてみようと思います。

 スポンサーにとってなぜ視聴率が重要なのかというと「番組の間に入るCMがリアルタイムでどれだけの家庭に流れるか」です。野球中継なんかだと、同じスポンサーの名前とか商品名とかが、打者の背後のフェンスにずっと出ていますが、あれは莫大な広告料金を出して流してもらっているわけです(番組中にずっと流れるんだから効果は極めて大きい)。
 リアルタイムで観ている人が、CMの時間帯にTVの電源をオフにしてしまうことはちょっと考えられません。トイレに行くくらいはあっても、横目で観ているものです。そこで「スポンサーの会社名や商品名が視聴者の目に映り耳に聞こえる」ことこそが重要なわけです。
 一方、番組を予約録画で観る人達はCMなど早送りして飛ばしてしまう人がほとんどでしょう。だからスポンサーにとっては無意味なわけで、視聴率の調査において予約録画のケースが無視されているのは、調査目的からして不要だからです。

 さて公表されている「視聴率」というのは、無作為抽出した一部の家庭のデータから「シェア」として算出するものですが、その番組が全国でどれくらいの家庭で流れていたかを知る目安です。番組のスポンサーにとっては、番組に出資する経費と「全国でどれくらいの家庭に流れたか」の効率で判断するわけですね。

 平成13年公表の国勢調査結果によると、日本全国には4706万2743世帯あります。この内、TVのない家なんて今やほとんどないでしょうけど、まあ大雑把に4500万軒くらいTVがあるとして、月曜日の夜7時という時間帯ですから1世帯で1台のTVが映っているものと仮定すれば、視聴率1%なら45万軒ということになりますね。「視聴率1%の上下」が大変な影響を与える意味が、これでわかると思います。

 さて、ここでこの1%で45万軒という大雑把な数字から、アニメと原作の関係を振り返ってみます。

 関東地方の【犬夜叉】平均視聴率は、1年目15.1%,2年目15.1%,3年目13.6%,4年目10.8%,5年目10.0%(8月4日まで)です。
 アニメ番組のターゲットは基本的に子供と母親層ですが、人気番組の定番であるバラエティーやドラマに比べると苦戦は否めず、「サザエさん」や「ドラえもん」「ちびまる子ちゃん」といった別格作品を除くと、せいぜい7〜8%程度しか稼げないのが普通です。その意味では、人気が落ちたとはいえ【犬夜叉】は今なお10%スレスレを保っており45万×10=450万軒が毎週観ているということになるので、一応スポンサー側からすればまだ「投資する価値がある」番組ですね。

 一方【犬夜叉】原作コミックスはいわゆるミリオンセラーで、1巻当り2〜300万部は売れる人気作品です。普通に考えて1世帯の住人の誰かが買えば、興味のある同居人はそれを読むでしょうから、購入されるのは1世帯に1部でしょう。つまり大雑把に仮定すると、【犬夜叉】の原作を読んだことがあり原作の内容を知っている人が住んでいる世帯はおよそ200万軒くらいということになります。

 で、前述したように「視聴率1%はおよそ45万軒」ですから、【犬夜叉】の原作を知っている世帯は200万÷45万=4.4%というかなりの勢力になります。ここで5年間の平均視聴率の推移を見直してみましょう。

 1〜2年目は好調で45万×15.1=680万軒が観ていました。原作【犬夜叉】を知らずにアニメで初めて知った人達が圧倒的多数だったと思われます。この時点では、原作を知っていた視聴者世帯はせいぜい100万軒前後だったのではないかと考えられますが、アニメを毎週観続けるうちに原作に興味を抱き、コミックスを購入した世帯が大きく増え、この2年のうちに原作を知っている世帯が200万軒クラスまで増えたと仮定してもさほど無理はないでしょう。

 さて、そこで問題のアニメ第23話(2001年4月16日放映)です。いわゆる「桔梗様大暴走」の回。あまりにも原作とかけ離れた彼女の言動に、おそらく原作の桔梗ファンが激怒して観るのをやめてしまった。事実、この第23話までは2年目の平均視聴率15.7%だったのが、第24話以降は14.8%と0.9%ダウンしています。この年の9月10日にはこの作品のベスト視聴率17.9%をマークしていたというのに…。

 45万×0.9=40万軒が離れたのだとすれば、原作を知る世帯の2割に相当します。原作のファン層が犬夜叉、かごめ、殺生丸、桔梗、弥勒(&珊瑚)の5層に大別されると仮定すれば、まさしく「桔梗ファンに見離された」ということになります。

 この2年目の暮れには劇場版第一作「時を越える想い」が公開されるわけですが、3年目に入りこの公開が3ヶ月ほど続いて終了して年度変わりするとまた視聴率ががくんと下がります。3年目の3月末までは16.3%だったのに、4月以降は12.8%と3.5%も大幅ダウンでした。3年目は全41回の放映中、実に22回が原作にないアニメの完全オリジナル(劇場版第一作の再放送を含む)だったのですが、このオリジナルの回だけの平均は13.6%で、原作にあったストーリーの回だけの平均とまったく同じでした。

 つまり前年に離れた原作ファンは、3年目に入ってますますそれを加速したということです。45万×3.5=157万軒となると、前年の40万軒と合わせて197万軒…ほとんど原作を知る世帯全体の数に相当します。3年目の4月以降には、原作を知る世帯のほとんどが見離してしまったといえます。もっともアニメオリジナルの回とそれ以外の回で視聴率の差はないので「オリジナルがつまらないので視聴者が離れた」とは一概に言えません。

 3年目の暮れには劇場版第二作「鏡の中の無幻城」が公開されるわけですが、4年目に入って映画公開中のTVアニメはオリジナル一辺倒で、2月中旬まで平均11.9%と前年の平均13.6%からまた1.7%ダウン。ついに原作を知らないアニメオンリー視聴者層にまで見離され始めます。2月下旬から七人隊登場で9月上旬の七人隊全滅&桔梗一時退場まで半年余り原作に沿って進めるのですが、この間の平均は10.8%ともはや盛り返しは不可能であることを証明。9月中旬以降のオリジナル8回(劇場版第二作の再放送を含む)の平均も10.8%とまったく同じ。

 結局「2年目に原作桔梗ファンに見離され、3年目に原作ファン全体に見離され、4年目にアニメオンリー層の一部にも見離され、5年目になると10%スレスレ状態」というわけです。

 以前、私が今年4月の「犬桔1時間スペシャル」について「原作の冒涜などというのは3年前からわかりきっていたこと」と評した理由がわかっていただけることと思います(苦笑)。ちなみに5年目のあの回の前までの平均値は10.2%で次週から8月4日までの平均値は9.7%。なるほど「あれでまた0.5%下がった」ともいえますが、既に10%を割ったり割らなかったり状態で「底を打っている」わけですから、もはや何をやろうと大差はないレベルまで来ていたと断言していいでしょう。

 今もなお観続けている視聴者層は、「原作とアニメは別物」と割り切っている人達か、アニメオンリー視聴層で特定キャラに入れ込んでいる人達のどちらかでしょう。そういう層だけで10%ギリギリを確保できるわけだからアニメとしては相当の作品ですが、「そろそろ打ち切り」の噂が流れるのも当然でした。

 2ヶ月ほど前に某サイトで「犬夜叉は9月で放映終了(作画監督が答えた)」「後釜はブラックジャック」「犬夜叉の映画はテレビの最終回の続き」「最終回の終わり方は原作と違う」という情報が流され、物議を醸しました。そのサイトがまもなく閉鎖されたために情報だけが一人歩き、かなりの期間どのアニメ雑誌もメディアも口をつぐんでいたわけですが、ようやく先日になって「9月13日アニメ犬夜叉最終回」と公表されました。

 拙文をここまでお読みになるような方ならもう百も承知のことと思いますが(苦笑)、原作至上主義(というより原作とアニメでは格が違いすぎる論者)の私には、アニメの最終回がどんなものになろうがあまり興味はありません。ただ、原作が年内に最終回を迎えた場合、それより後になる劇場版アニメ第四弾が、中途半端に原作の「いいとこ取り」をやろうとするのだけは勘弁してもらいたいと思います。

 キャラクター達を「表層感動ウケ狙い」のために道具にするサンライズの姿勢については、もう何も言いません。しかし、あれだけ自分達のキャラにアレンジしたのなら、せめて最後まで責任を持ってもらいたいものです(といってもTV版最終回で、一部視聴者へ媚びるために劇場版第二弾のような妙な演出をやられるのも嫌ですけどねえ…)。
6.アニメ終了に寄せて…置き去りにされた視聴者(哀)

 ボロクソにアニメ犬夜叉をけなす私が書くことですからろくなものではありません。アニメ好きの方は読まない方がよろしいでしょう(…って、アニメ好きなら途中までも読めるわけなかったでしょうけど^^;)。

 事実、私は3年目以降のアニメ犬夜叉をほとんど視ていませんでした。「視る価値がない」と判断したからですが、同じように考えた視聴者層もかなりいたようで、約45万世帯/%×5%=225万世帯の「同志」がいらっしゃいましたね(苦笑)。

 まあそれでもこんなサイトを開設するくらい入れ込んだ漫画作品を原作とするアニメです。せめて最終回くらいは視るか、と3倍録画で某モノクロ怪獣映画のVHSテープに上書きして(どの程度のものと考えているかバレバレ^^;)確認したんですけど…。

 まず前回「一部視聴者へ媚びるために劇場版第二弾のような妙な演出をやられるのは嫌だ」と書きましたが、えーと、原作と違うところってどこだったっけ? と思うほどそっくりそのまま。コミックス第35巻第9話から同36巻第8話までの一巻分を猛スピードで詰め込んで、ひとしきり主要キャラ全員に出番作ってシャンシャンシャン(鋼牙だけは出番をもらえず、エンディングで一瞬顔出しだけ)。

 が、しかし。原作を知らないアニメオンリーの視聴者にとっては「これのどこが最終回じゃあ!」とTV画面に向かって物を投げたくなったでしょうねえ。奈落一派は生死不明(ウヤムヤ)だし、四魂の玉は未完成のままだし、琥珀も鋼牙もどこで何をやってるのかわからないままだし、魍魎丸も御霊丸も謎のままだし、「まだまだ続くという前提で描かれた場面」のオンパレードでハイ終わり、なんですから。
 なるほどああいうタイプの最終回は、過去に何度かあったパターンではあります。「問題は何一つ解決されていないし、敵ボスキャラは謎の伏線をどっさり張り巡らせておいて全部謎のまま、ストーリーは戦いはこれからだで幕…」。
 でもそういうのは「1年2クールで打ち切り」と決められた作品での話。まがりなりにも5年も続いたアニメの最終回がこれでは「人気がなくなったので打ち切られました、マル」と言ってるようなものです(苦笑)。その意味では異例の終わり方でしたね。

 おまけにラストで劇場版第四弾のCM…「続きが視たかったら映画を視に来てね」では「ふざけんなっ」にもなりますよありゃ。キャラ解釈が散々迷走を繰り返しながらも辛抱強く視続けてきた視聴者は完全に置き去りにされました。「この作品が大好きだから放送復活を願う」というよりも「あれで最終回なんて納得いかないから続きをちゃんと放映しろ」という意味の抗議が相次ぎそうです。

 さて原作至上主義者として冷静に見直してみますと、この最終回は「アニメスタッフの原作者への全面降伏」に感じられます。かつてあれだけキャラを暴走させたアニメ犬夜叉が、1時間枠使った最終回で完全な原作なぞりしかできなかったことがその証です。独自の演出なんてほとんどなし。強いて言うなら犬夜叉とかごめに「なぜそこで離れる」「なぜそこでくっつく」とツッコみたくなる‘間’の差があったくらいですが、そのへんの表層ウケ狙いにはもう慣れてましたから気にするまでもなし。なお妖犬化の場面だけ、例によって過剰描写でしたね…(-_-;)。

 【今週の「犬夜叉」】のコーナーで第355話「かけらを使う」の時に書きましたが、私はあの回は「アニメのキャラ解釈に対する原作者からの返答」であったと考えています。結局のところ、アニメ最終回でのかごめの行動はまったくその原作描写から逸脱しませんでした。それはそれでほっとしましたが、アニメスタッフの「事なかれ主義」も感じます。

 つまり「まったくの原作なぞりなら、うるさいファンも文句を言わないだろう。打ち切りが決まっている以上、詰めるだけ詰め込んで一区切りにして、劇場版第四弾に矛盾がないように繋げばいい」という考え方ですね。

 あるいはさすがのアニメスタッフも「かけらを使う」の原作を読んだ時に原作者の本心を感じ取ったのかもしれません(苦笑)。高橋先生は「アニメ化を了承するということは、自分の手から離れること」と完全に割り切るタイプの作家で、アニメの内容に関する口出しは一切なさいません。むしろアニメスタッフ側が妙に気遣って劇場版のオリジナルキャラのキャラデザインを原作者に依頼したりしてますが…。

 私は拙サイトの開設当時「アニメは別作品として原作と比較し、原作の価値を語る」つもりでこのコーナーを作ったわけですが、作品としての質を競おうにも相手の破綻ぶりがひどすぎて、とてもじゃないが平静に比較できませんでした(苦笑)。こうまでメインライターの脚本家と趣味が合わないのでは仕方がないと思い、ほとんど未更新だった次第でしたが、最後の年になってこれだけブーイングの文字を書き連ねているのがいささか心苦しくもあります。

 散々振り回された挙げ句に置き去りにされたアニメ犬夜叉の視聴者は不憫です。私が言えることは「一度頭をゼロクリアして、古本屋で原作を第一巻から通して読んでみてほしい」ですね。この作品の評価を、アニメを通してやってほしくはありません。表層劇的ウケ狙いの描写などでは絶対に語れない深みと魅力があふれた漫画作品だからです。

 結局関東地方の【犬夜叉】平均視聴率は、1年目15.1%,2年目15.1%,3年目13.6%,4年目10.8%,5年目9.9%でした。やはり「数字は正直」ということですね。平均で10%割れして幕、とは象徴的です。

 思えば別ページでも書きましたが、この作品がやたらに誤読されやすい性格をもっていたことが仇になった格好でした。「やたらにキャラクターが命を落とす」「プロトタイプ化された悲劇的恋愛を喜ぶ」ような人達には、この作品の奥深さと真の魅力が理解できるはずもなかったのです(溜息)。どうせならうんと暴走を徹底して、原作とは似ても似つかぬストーリーにしてくれた方がまだすっきりしたものを、原作ファンやマニア層の抗議を気にしすぎたのか度胸がなかったのか、フラフラと迷走を繰り返して余計に見苦しいものにしてしまいましたからね。

 さて、原作とアニメの「競争」は劇場版第四弾に舞台を移します。私にとっては毎回毎回最後まで視るのに物凄く忍耐を要する劇場版なんですが(^^;)、ハム太郎と同時上映だろうがなんだろうが、多分「原作の価値(勝ち)を見極めるために」映画館に足を運ぶでしょう。年寄りの屁理屈の山に耐えて、ここまで読んでくださった方に感謝申し上げます。
7.書いてなかったのでちょっとだけ追記
…そういえば4年間もここを更新していませんでした(^^;)。ええまあ、劇場版第四弾(えーと…紅蓮の蓬莱島…とかなんとかでしたっけ?)、観たことは観たんです(観たんかい)。

 感想ですか? 一言で済みます。『今度は桔梗かよ(-_-;)』。

 悪いことは言いません。もう【犬夜叉】アニメ復活なんて金輪際企画しないのがよろしい。サンライズとアニメスタッフが少しでも恥を知るなら、二度とこの作品を手がけないでいただきたい。

 どうしてもやるというなら、蜘蛛頭の回の次あたりから全部作り直すべきです。声優さん達にも悪いですが、平成13年から16年までのアニメ犬夜叉は「なかったこと」にした方がよろしい。(かのエウ゛ァンゲリオンは、パチンコの超大ブレイクで資金ができたというので大型リニューアルして劇場版になりました。羨ましいケースです。)

 【犬夜叉】は優れた作画陣や、例えば【名探偵コナン】のスタッフらに制作していただければ、きっと後世に残る名作になっただろうに…それがかえすがえすも残念です。
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