北緯40度の風景

花巻バスセンターとその周辺


私が岩手県入りした1984年の時点で、目にすることができた時刻表に、まだ「花巻バスセンター行」の文字がありました。どんなバスセンターがあるのだろうと、6月ごろに花巻に行ってみたのですが、その場所は見つかりませんでした。来るバスの行き先も「花巻バスセンター」ではなく、「花巻(末広町)」に変わっていました。
それ以来、「花巻バスセンター」に関わる写真や資料等に出会うことはなく、永らくその詳細は不明でした。
しかし最近になって、板橋不二男様から頂いた写真を1970年代奥の細道にまとめている途上で、掲示板で「ここに出ている写真の場所が花巻バスセンターではないか」とのご指摘を頂き、にわかに花巻バスセンターに対する興味が再燃してきたのです。
そんな花巻バスセンターと、花巻地区の営業所の変遷をまとめてみます。(注1)

花巻市中心部

3ヵ所のバス営業所

1976年に岩手県交通が成立するまで、花巻には2つのバス会社がありました。
一つは花巻バスで、末広町の「花巻バスセンター」(地図の①)と桜木町の「本社・花巻営業所」(地図の③)を持っていました。
もう一つのバス会社が花巻電鉄で、鉄道の西花巻駅に隣接した場所(材木町)に営業所がありました(地図の②)。花巻電鉄は1971年に合併により岩手中央バスとなります。

この地図には、1972年までに廃止となった花巻電鉄の鉄道も入れてあります。
花巻温泉に向かう鉄道線と、西鉛温泉に向かう軌道線の2路線があり、「西花巻駅」で両線は分岐していました。1965年に中央花巻〜西花巻間が廃止となり、1966年に西花巻駅は東側(現在花巻消防署があるあたり)に移転しました(注2)。1969年には軌道線(花巻〜西鉛温泉間)が廃止となり、1972年には残っていた鉄道線(花巻〜花巻温泉間)も廃止となりました。

花巻市中心部 1960〜70年代(昭和40年代)
花巻地図
花巻電鉄の鉄道跡
西公園〜西花巻間(2015年)
西公園〜西花巻間

撮影:長谷川竜様(花巻市藤沢町 2015.10.4)

西花巻〜中央花巻間(2018年)
西花巻〜中央花巻間

撮影:花巻市末広町(2018.10.29)

花巻電鉄の鉄道敷の一部は、今もその面影をとどめています。
鉄道と言っても狭軌より狭い軽便(762mm)の単線なので、幅員は自動車1台がやっとです。
西公園〜西花巻間は、現在自転車道になっています。一般道路から左にカーブして分岐した先のあたりです。直角に曲がれない鉄道線は、緩いカーブを描いているのが特徴。
西花巻〜中央花巻間は、東北本線をオーバークロスした後、中央花巻(花巻駅東口方向)に向けてやはりカーブを描きます。

①花巻バスセンター

地図へ

地図・空中写真閲覧サービスの1976年の空中写真をもとに、花巻バスセンターの拡大地図を作成してみました。
花巻市末広町の岩手銀行鍛治町支店の向かいに、花巻バスセンターはありました。
構内は車両の待機場となっており、道路側にバスセンター建物があります。建物の待機所側にバスが斜めに停車しており、頭端式ホームがあるようです。この造りは、盛岡バスセンターとよく似ています。

花巻バスセンター
花巻バスセンターを出発(1973年)
花巻バスセンター

撮影:板橋不二男様(花巻バスセンター 1973.11.3)

元花巻バスセンター跡地(2015年)
花巻バスセンター

撮影:とまります様(花巻市末広町 2015.12)

1973年の写真は、バスセンター出入口を出発する岩手中央バスの盛岡行き急行バス。バスセンターの建物は写っていませんが、写真左端にちょっとだけ見えている民家の屋根にご注目ください。
2015年の写真は、花巻バスセンターの跡地です。建物はバスセンター廃止後すぐに取り壊されたようですが、その後更地のまま駐車場となっています。ここで右端に見えている建物が、1973年の写真の左端の家屋です。

花巻バスセンター構内
岩2く3084

撮影:板橋不二男様(花巻バスセンター 1973.11.3)

花巻バスセンター構内の西側に駐車中のバスです。後ろに2階建ての建物がありますが、2015年の写真で中央に写っているトタン屋根の建物と同一と思われます。トタンの色は、この時は薄青色ですが、その後塗り替えられて赤色になったようです。

花巻バスセンター構内
花巻バスセンター

撮影:板橋不二男様(花巻バスセンター 1973.11.3)

花巻バスセンター構内の南端に駐車中のバスです。手前には、花巻バスのワンマンカー東和営業所行、その隣には岩手中央バスの盛岡行き急行バスが待機しています。
奥に見えるモルタルの建物が花巻バスセンターです。
花巻バスセンターは、1955年に開業し、1983年に廃止されたそうです(注3)

②花巻電鉄花巻営業所(西花巻駅)

地図へ

次に、花巻市材木町にあった花巻電鉄の花巻営業所です。
ここは、花巻電鉄の鉄道線と軌道線が分岐する西花巻駅があった所で、車両基地があった関係で、同じ敷地内にバスの営業所も併設されていました。
1965年に鉄道線の中央花巻〜西花巻間が廃止されると、軌道線がここで方向転換することになるため、西花巻駅は西側に移されました。その後は、敷地全体がバスの営業所になったようです。
この営業所は岩手県交通成立の1976年に花巻統括営業所となった後、同年中に新設の花巻営業所(本舘)に移転した模様です(注4)
現在は花巻税務署になっています。また、1966年の移設後の西花巻駅は現在の花巻消防署附近にあったようです。

花巻電鉄花巻営業所
元西花巻駅(2015年)(花巻税務署)
花巻営業所

撮影:とまります様(花巻市材木町 2015.12)

西花巻駅跡地看板(2018年)
西花巻駅

撮影:花巻市材木町(2018.10.29)

花巻電鉄花巻営業所(西花巻駅)の現在の様子です。花巻税務署の建物が建っています。この建物のあたりにバスの車庫があったようです。
そこから右に目を向けた所にある理容室の前に、花西地区まちづくり協議会が立てた「西花巻駅跡地」の説明板が立っています。

③花巻バス花巻営業所(桜木町)

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花巻バスの営業所は、桜木町にあったようです。また、この場所に花巻バスの本社も併設されていたようですが、詳細はよく分かっていません(注5)
1973年には本社、営業所ともに飯豊町に移転しました。

④花巻バス本社(花北営業所)(北上市飯豊)

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移転後間もない花北営業所(1973年)
花巻バス本社

撮影:板橋不二男様(花巻バス本社 1973.11.3)

岩手日野自動車(2018年)
花北営業所

撮影:北上市飯豊町(2018.10.3)

花巻バスの本社は、1973年に北上市飯豊町の国道4号線沿いに移転しました。
場所は、花北モータースクールの南側、いすゞ自動車の向かい側になります。
写真は移転間もない頃の写真で、路面は砂利敷きになっています。後ろに「ISUZU トラックバス」という赤い看板が見えています。
この場所は、1976年の岩手県交通合併に伴い、一旦は岩手県交通花北営業所となった後、同年中に本舘に新設された花巻営業所に集約された模様です。その後、この場所は花巻観光バスの北上営業所となった後、岩手日野自動車の花北営業所となっています。
2018年の写真は、国道沿いに南側を向いたところ。左の日野自動車がかつての花巻バス本社、右にはいすゞ自動車東北の花北支店が今もあります。

⑤岩手県交通花巻営業所(花巻市本舘)

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花巻営業所(1984年)
花巻営業所

撮影:花巻営業所(1984.8.24)

花巻営業所(2018年)
花巻営業所

撮影:花巻営業所(2018.10.3)

上記のように、花巻エリアには、花巻バス本社(北上市飯豊町)、岩手中央バス花巻営業所(材木町)の二つが存在していましたが、両社が1976年に岩手県交通に統合されたことで、営業所も統合されることになりました。
新しい営業所は、花巻駅より北側に向かったところにある花巻北高校の近くの瀬川沿いに設けられました。当初は、敷地内の中央に木が2本立っていましたが、2018年の写真では木はなくなっています。

(注1)
本稿は、画像掲示板(2018.12.12〜)のとまります様、ks様の情報をもとにしています。
(注2)
湯口徹(2014)「花巻電鉄(上)」(ネコ・パブリッシング)による。
(注3)
鈴木文彦(2004)「岩手のバスいまむかし」による。
(注4)
幣サイト掲示板過去ログの県交通家族会様(2002.10.7)を参考に記述しました。
(注5)
花巻バス花巻営業所については、鈴木(2004)では1966年に花巻市桜木町に移転となっているが、地図・空中写真閲覧サービスの1962年の空中写真で、既に数台のバスと東側の建物が写っている。
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80s岩手県のバス“その頃”